2019年11月22日

GMO大論争〜科学の目線、ゲノム編集C

ゲノム編集技術の登場で暴露された遺伝子組み換えの欠陥

 遺伝子組み換えは、非常に無駄が多いプロセスでもある。歪んでいるか、繁殖力がないか、さもなければ生きられない莫大な数の植物を作ることで無駄が多い。組み換え動物の創造に関しては、それほど長く生きられない形態の生物を創り出すというモラル的な問題もある。

「私がコンタクトした科学者の1人は、研究開発段階で偶然に作られた何尾かの組み換えサーモンを目にして、緑色のサーモンがいたことから『本当にショックだった』と言っています。『体中に腫瘍(lumps)のあるサーモンもいた。全部捨てられなければならなかった。それほど長く生きることができない動物を創り作り出し、彼らを処分しなければなりませんから、とても残酷なプロセスだと思います』」(2)

 ゲノム編集の登場には、皮肉な結果がある。遺伝子組み換えが不正確である事実を含めて、GMO技術の欠点は、公然とは認められてこなかった。けれども、新技術、クリスパー技術は以前のやり方よりもはるかに正確だと主張することによって、GMOを推進する研究者も、以前の技術が不正確であることを認めてしまっているからだ(2)

ゲノム編集食品もリスクがある〜第4版が必要となったわけ

20191118.jpg『GMOの神話と真実』の第4版は、ゲノム編集について新たな章が設けられている(3,4)。なぜ、新版が必要なのかについて、クレア・ロビンソンさんは、こう語る。

「数年前に、GMO産業とそのロビイストたちが、『古いGMOは悪いものだ』と強調して、ゲノム編集作物や食品として新たなベンチャーを再び立ち上げていることが明白となりました。ゲノム編集は、以前のスタイルのGMOよりも正確でより安全で、気候変動から食料不足に至るまで、私たちが直面する多くの課題を解決できると主張されています。もちろん、以前のGMOでもこうした同じ約束を聞かされてきました。それらは偽りでした。そして、今度も偽りなのです」(4)

 ゲノム編集は、未来の食や農業には欠かせないものとして推進されている。けれども、ゲノム技術も紛れもなくGMOにほかならず、健康や環境に対して、同程度のリスクがあると本書は主張する(3)

 マイケル・アントニュー博士はこう言う。

Michael-Aatoniou.jpg「ゲノム編集作物は、旧式のGMO作物よりも創り出すことがはるかに容易です。検査もされていないゲノム編食品や飼料作物が市場流通するという差し迫った見込みに直面している。ですから、それが健康や環境にもたらすリスクについて、新たな章を設けることが重要だったのです」(4)

 ロビンソンさんはこう続ける。

Claire-Robinson.jpg「世界のどこであれ、ゲノム編集食品や作物がもたらす脅威についてほとんどの人たちが知っていないことがわかります。GMO産業やそのオトモダチは、知ることに対する権利への同意を得ることなしに、私たちの食べ物を劇的に変えようとしているのです。悲しいことに、公的研究機関の多くの科学者たちもこのロビー活動に加わっていて、こうしたニューGMOの安全性について、信頼がおけずエビデンスに基づかない主張をしているのです。事実に基づいて武装する必要がある。ですから、ゲノム編集について新たな章を設けて本を改訂しました(4)。食品や飼料作物に対する新たな脅威を、検査をされていないこの新製品を厳密に管理して、表示もすべきである理由を説明したのです」(3,4)

 新版ではGMO作物と関連した健康上のリスクを示す新たな研究もアップデートされている(3)

 とはいえ、ゲノム編集の進歩はあまりにも急速である。そこで、クレア・ロビンソンは「GMウォッチ」のニューズレターとウェブサイトで最新情勢をフォローしている。「GMウォッチ・クリスパー」でググることで、ゲノム編集についての最近記事にアクセスしてほしいと薦める(4)

ゲノム編集といえどもリスクが残る

 確かに、クリスパーキャス9を使うことで、より正確な遺伝子操作が可能にはなる。ゲノムの特定の領域に外来遺伝子を挿入できるだけでなく、ターゲットとした遺伝子を改変できる。けれども、クレア・ロビンソンさんは、クリスパーのようなゲノム編集技術をもってさえ、いまだに完璧ではなく、懸念が解消されないと述べる。なぜなのだろうか。

 その一つが、オフターゲットの影響だ。確かに、ゲノムでは改変できる場所を絞り込める。けれども、ゲノムの1、2の遺伝子を変えるだけで、その副作用がさざ波を立てるようにゲノム全体へと広がるという純然たる事実の前に、想定外の影響が生じる可能性が否定できない。

 第二は組織培養の問題だ。従来のGMOと同じく、ゲノム編集においても、実験室の条件下で組織培養した植物細胞を使う。この培養それ自体がDNAの突然変異を誘発する影響があり、これも遺伝子機能を劇的に変え、有害な影響をもたらすリスクがあるのだ(2)

 このオフターゲットの影響と植物組織培養で誘発された突然変異があいまって、植物の生化学が変わればどうなるか。そのプロセスで新たなタンパク質が作られ、それは有毒であるかアレルギーを引き起こすことがありえる。あるいは、植物の生化学経路が変われば、有毒になったり、栄養価が下がることもありえる(2)

【人名と画像】
マイケル・アントニュー(Michael Antoniou)博士の画像は文献1より
クレア・ロビンソン(Claire Robinson)さんの画像は文献1より
【引用文献】
(1) Peter Brown, Why genetically engineered food is dangerous: New report by genetic engineers, 17 June 2012.
(2) Dr. Mercola, New Book Sets Record Straight on GMO Myths and Truths, April 24, 2016.
(3) GMO Myths & Truths
(4) The book GMO Myths and Truths: A Citizen's Guide to the Evidence on the Safety and Efficacy of Genetically Modified Crops and Foods is now in its 4th edition.*
(5) 2019年11月11日、BS11の番組「インサイドOUT」で「ゲノム編集食品解禁!食の安全は大丈夫?」以下のリンクで11月27日まで放送
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2019年11月21日

GMO大論争〜科学の目線、GMOは本当に安全なのかB

遺伝子工学の専門家は遺伝子作物の危険性を憂慮する

John-Fgan.jpg もう一人の著者、ジョン・フェイガン博士は、フードシステムの持続性、バイオセーフティとGMO検査の権威である。コーネル大学で生化学と分子細胞生物学の博士号を持ち、以前は米国の国立衛生研究所で、がんの研究を実施していた遺伝子工学の研究者である。現在、生殖細胞の遺伝子治療は、ほとんどの国において、禁止されているのだが、人間の生殖細胞の遺伝子工学の研究によって産み出される知識が「デザイナーベビー」を産み出すことにも使えることを懸念し、博士は安全性と倫理的な理由から受け入れがたいと考えた。1994年に、博士は遺伝子工学を用いたがん研究に対して約61万4000ドルもの補助金をもらっていたのだが、それを返すことで自分の懸念を強調した(1)

 同じ理由から、国立衛生研究所と国立環境健康科学研究所から受けていた計125万ドルの2つの追加補助金の申請も取りやめ、農業における遺伝子工学での使用に疑問を呈する倫理的な態度を取り、遺伝子工学に関して、ごく初期から科学的な議論の発言をはじめた。食品中のGMOに対する透明性を消費者に提供するため、1996年には、GMOの検査と認証企業を創設した。

 ファーガン博士はこう述べる。

「現在、実践されている遺伝子工学は、粗っぽく、不正確で時代遅れのテクノロジーなのです。食べものに想定外の毒素やアレルゲンを作り出しますし、栄養価に影響も及ぼします。

 そして、遺伝子組み換えを使わずに食用作物を改善するうえで、遺伝学の知識のもっと良い活用方法があることが最近の進歩からわかってきています。

 すべての遺伝子組み換え作物の75%以上は、除草剤耐性があるように操作されています。これは、除草剤耐性のスーパー雑草が広がることにつながり、こうした有毒な化学製品に農民やコミュニティがさらに被曝することにゆきつきました。そして、疫学的な研究は、除草剤使用と先天性欠損症やガンとの関連性を示唆しています。こうした調査結果は、根本から遺伝子組み換え作物の有用性や安全性に疑問を呈します」(1)

元米国立衛生研究所の遺伝子工学の専門家の主張と相反する明治大学教授の見解

 2019年11月11日にBS11で、山田正彦元農省と対談をされた明治大学の中島春紫教授は、「ラウンドアップは最も安全な農薬だ」と述べられているのだが(5)、ファーガン博士は、そうではないと指摘する。これも博士が農業の専門家ではないためではないだろうか。まず、GMOに伴うラウンドアップからチェックしてみよう。

Charles-Benbrook.jpg
 まず、GMOによって除草剤他の化学資材の量が減らせるとされているが、現実は正反対だ(2)。遺伝子組換え作物の75%以上は除草剤耐性のために操作され、その50%以上は、ラウンドアップに耐性があるように組み換えられている(1)。遺伝子組換え作物が取り入られたところでは農薬の使用量は逆に増えている(1,2)。農業経済学者、ワシントン州立大学のチャールズ・ベンブルック教授の研究によれば、同面積の非組み換え作物よりも7%も多くの農薬が散布されているという。増えた農薬量は4億400万ポンドにも及ぶ(2)

 また、ラウンドアップが作物病の増加、とりわけ、ダイズ萎縮病を引き起こし、人間や家畜に毒性作用がある真菌、フザリウム感染と関係していることを、多数の研究は示している(1)

 それだけではない。ラウンドアップのような商業製剤は、複雑な化学製品の混合物なのだが、厄介なことに、グリホサート単独よりも1000倍も毒性が強いことを検査は示している。ラウンドアップは、植物全体に取り込まれ、洗い流すことができないため、こうした植物を口にするとき、一般的な毒素と潜在的な発がん物質を食べることになる(2)。さらに、疫学的な研究からは、ラウンドアップの被曝と流産、先天性欠損症、神経学的な発達障害、DNAの損傷、あるタイプのガンとの関係性が見出されている。事実、南米の遺伝子組み換えダイズの生産地域では、ラウンドアップやそれ以外の作物への農薬散布に被曝した人たちは、先天性欠損症や発ガン率がエスカレートしていると報告されている(1)

 さらに追い打ちをかけるのが、2012年時点では、米国では2400万haもの農地がグリホサート耐性のスーパー雑草でおおわれていることだ。こうした雑草に対処するため、ジカンバやエージェント・オレンジの成分である2,4-Dといったさらに有毒な化学製品が使われている。つまり、農民たちはこれまで以上に除草剤を使っているだけでなく、雑草は耐性を高めたため、ますます毒性の強いものを使うことを強いられるのだ(2)

GMO技術で作り出されたBt作物も安全ではない

 Bt作物は、農薬の使用量を減らしているわけではない。散布する代わりに、作物にあらかじめ仕込まれいるだけで農薬の使用方法を変えているだけだ。

 おまけに、Btテクノロジーは持続可能ではないことが判明している。害虫の抵抗性が進化し、二次発生があたりまえになるからだ。そのうえ、Bt毒素は安全ではない。慣行農家も有機農家も長く使用してきたことからBt剤は安全だとGMOの推進派は主張する。けれども、GMO処理されたBt毒素は、自然な形態とは異なり、様々な中毒やアレルギーを引き起こすことが知られている。

 GMOのBt毒素は、害虫に対して毒性があるだけではない。実験動物に対する給餌試験から、Bt作物そのものに毒性作用があり、環境中ではターゲットとしていない生物に対しても毒性作用があることが見出されている。そして、Bt毒素は消化によっても完全には分解されず、カナダでは妊婦の血液からも検出され、胎盤を通じて胎児も汚染されていることが判明している(1)

長期的にはGMOは安全ではない?

 「GMOが安全であることは実証されている」

 推進派がこう何度も口にする。けれども、実際のエビデンスはどこにあるのだろうか。不思議な点のひとつは研究の短さだ。「安全である」とする推進側の研究はいずれも短期間だ。ロビンソンさんが指摘するように、バイテク科学者たちの間には、ラットでは90日間よりも長いGMO食品の試験はしないとの申し合わせがあるように思える。人間に換算すれば90日はたった7〜9年にすぎない。GMO食品が承認されて市場流通すれば、生涯にわたって食べることになるのだ。平均寿命が約70年もあることを考えれば、安全性のための研究期間はあまりにも短い(2)

 数は少ないとはいえ、この数年、実験動物に長期的にGMOを食べさせた研究もなされているのだが、一般的な傾向として肝臓や腎臓への毒性、免疫反応障害が見られ(1,2)、消化器系、炎症、生殖と関連した問題も見出せている。確かに懸念すべき理由はあるのだ(2)

 GMO食品や作物に対してEUでなされた家畜への給餌試験から、安全性が示されている、とGMOの推進派はよく主張される。けれども、これも事実と違う。本当の研究結果は、GMOを給餌した動物と対象動物との間で統計的な有意差を示している。想定外に毒素やアレルゲンが産み出されているためだ(1)

Claire-Robinson.jpg「ラットにおける90日間の産業側の検査でさえ、肝臓や腎臓毒性、免疫反応の徴候が目にできます。彼らは言います。『これらは、生物学的に関連した調査結果ではありません。より長いテストをする必要はありません』(2)

 推進派は、「重要ではない」として、EUの統計的にも有意な研究結果も却下する(1)

「これは、非科学的で懸念すべきことです。私たちは何が起きているかについて真相を究明するために、長期的なテスト、複数世代のテストをしなければなりません」

クレア・ロビンソンさんは言う(2)

実質的同等性というペテン〜遺伝子組み換えには副作用がないのかどうかもわからない

 GMOを正当化するためになされているもうひとつの主張は、すでに何百万人もの米国人がGMOを食べていてもなんら悪影響がでていないというものだ。これも、完全に非科学的な主張だ。誰が実際にチェックをしているのだろうか。誰も、その潜在的な副作用を評価していないし、確認もしていない。GMO食品には表示がないから、つながりをつけることさえできない(2)

 GMO食品に対する規制体制は米国が最もゆるい。FDAはGMO作物に対する安全性の検査を義務づけてはいない。このため、GMO作物に対する安全性を評価することすらできない。市場で表示する必要さえ求められない。

 バイテク企業の主張に基づき、GMO作物に対しては「実質的同等性」と判断がなされ、「規制緩和」がされているだけだ。けれども、この主張は、BSEの牛がBSEにはかかっていない牛と実質的に同等性であり、しかるがゆえに安全に食べられる、と主張しているようなものだ。科学的なエビデンスから正当化することはできない(1)

 とはいえ、表示をされず、そのため、追跡できないため、GMOの消費との関連性を誰も確実に言うことはできない。けれども、健康上の統計からは、米国人が過去、数十年でますますより病気になっていることが明らかだ。慢性疾患が明らかに増え、人生後半で過去に起こらなかった病気に、多くの子供たちがますますかかっている。関連の可能性は確かに無視することができない(2)

自然を超えた不自然な育種がもたらす結果は誰もわからない

 GMOの推進派は、遺伝子工学が自然な育種方法を拡充したものにすぎず、それだから安全だと主張する。けれども、これも真実からはほど遠い。遺伝子工学は、作物改良で用いられている従来の育種技術とは劇的に違う。なにより、それは研究所でなされる技術で、自然によって決して創造することができなかった食べ物を科学者が作り出している。植物種間だけでなく、種の壁を越えてDNAを移すことができる。昆虫や動物から取り出したDNAを植物のゲノムに挿入することすらできる。

 それによって、植物のゲノムは破壊され、毒性等、意図せぬ想定外の影響が起こりうる(2)

 クレア・ロビンソンさんはこう説明する。

「遺伝子工学は、DNAが異なる種類の植物間だけでなく、異なる界間でさえ移すことが可能です。昆虫、動物、ウイルスやバクテリアからDNAを取り出して、それを食用作物のゲノムに挿入できるのです。これは、意図的に挿入された遺伝子を除けば、あとはまったく同じだと話します。ですが、これは真実でありません。ゲノムは、とても複雑で、レゴのようなものではありません。実は本当に不正確なプロセスです。植物のゲノム、その遺伝子組織と機能が破壊され、その結果、想定外の影響があることがわかっています。

 遺伝的を組み換えで重要となるのは、遺伝子の新たな前後関係です。たとえ、リンゴからある遺伝子を取り出して、それをまたリンゴに入れるとしても、遺伝子が新たな文脈に突然におかれることから、それが何をしているかについて、本当のところはわかりません」

 つまり、GMO作物開発に用いられている遺伝子組み換え技術は、正確でもなければ、想定外の結果をもたらすため、どのような副作用が産み出されるのかについて科学者は本当にわかってはいない。その安全性が確証されてはいないというのが真実なのだ(2)

編集後記

 本書の著者たちは、こうした主張は科学なエビデンスを用いたペテンなのだと曝露してみせる(3)。この情報を得てみると、明治大学の中島春紫教授よりも山田正彦元農省の方に軍配をあげたくなってくる。けれども、より正確なゲノム編集はどうなのだろうか。こちらは、GMOのように不正確ではないのではあるまいか(続)。

【人名と画像】
ジョン・フェイガン(John Fagan)博士の画像は文献1より
チャールズ・ベンブルック(Charles Benbrook,1949年〜)の画像はこのサイトより
クレア・ロビンソン(Claire Robinson)さんの画像は文献1より
【用語】
生殖細胞系遺伝子治療(germline gene therapy)
国立衛生研究所(National Institutes of Health)
国立環境健康科学研究所(National Institute of Environmental Health Sciences=NIEHS)
ジカンバ(Dicamba)
【引用文献】
(1) Peter Brown, Why genetically engineered food is dangerous: New report by genetic engineers, 17 June 2012.
(2) Dr. Mercola, New Book Sets Record Straight on GMO Myths and Truths, April 24, 2016.
(3) GMO Myths & Truths
(4) The book GMO Myths and Truths: A Citizen's Guide to the Evidence on the Safety and Efficacy of Genetically Modified Crops and Foods is now in its 4th edition.*
(5) 2019年11月11日、BS11の番組「インサイドOUT」で「ゲノム編集食品解禁!食の安全は大丈夫?」以下のリンクで11月27日まで放送
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2019年11月20日

GMO大論争〜科学の目線、GMOで本当に食料危機は救えるのかA

GMOは無知な市民が非科学的な感情で反対している?

 GMOは健康や環境にとっても安全で、優れた栄養をもたらし、農薬の使用量を減らし、かつ、高収量であるため、増加する人口を養うために必要だと主張されている(3)。GMOを批判するのは科学的ではないのではあるまいか。GMO食品についての議論は、感情的で無知な活動家たちと合理的なGMOを支持する科学者たちの間の論争なのではあるまいか(1,3)

 2012年に出されたリポート「遺伝子組み換えの神話と真実」は、こうした主張に疑問を投げかける。リポートは、GMO作物や食品がもたらす健康や環境上のリスクを示す膨大な科学的に査読された論文他の権威あるエビデンスを示す(1)

 メルコラ博士は言う。

Steven-Druker.jpg「スティーブン・ドルンカー博士のランドマーク的な著作『遺伝子組み換えのねじ曲げられた真実(Altered Genes, Twisted Truth)』(2016)日経BP社には、自分も本当に感動した。大半のGMO支持者の議論を壊滅させよう。けれども、悲しいことに、ほとんどが彼の本を読むことができない。本は分厚く、挑戦的だからだ。これに対して『GMO MythsとTruths』はとても簡潔で適切なうえ、ナンセンスなGMOのプロパガンダに対して強力な反撃をしてくれる」(2)

 確かに、この本は短時間で各章の概要を読めるし、その一方で、必要な人向けに詳細な情報や多くの引用文献も掲載されている(3)。しかも、珍しいことに、このリポートは、活動家からではなく、科学的にもGMO作物や食品には慎重であるべきだと考える2人の遺伝子工学の研究者からのものなのだ(1)。なぜそうなのか。著者の1人、クレア・ロビンソンさんはイギリスにあるGMウォッチの編集者なのだが、そのわけをこう語る。

「私は、1990年代から、GMOの議論に関わってきました。その頃から、何人かの遺伝子工学の研究者を知っていて、健康や環境への影響を警告していました。当時は、他にも懸念すべき心配事があまりに多くあったために、そのことを考えたくありませんでした。ですが、『この地球上の食用作物のすべてを組み換えることをモンサントが望んでいる』との話を聞いて、これは心配しなければならないことだと思ったのです。科学者たちの声は、まだ消えていませんでした。まだこうした食品の影響について警告していました」

 ロビンソンさんは環境グループからではなく、科学者からの刺激でGMOを懸念するようになったのだった。そして、こう続ける。

「GMO作物に反対する活動家たちは『科学がない。無教育で不合理なのだ』と噂されていることにそこで気がつきたのです。私も共著者もそれが事実ではないことを知っていました」

 これが本を作ることにつながった。したがって、この著作は、「GMOに対する心配には科学的な根拠がない」と主張する人々に対して、真実によって市民を武装させるとの明白な目的のために書かれている(2)

「いま、手に出来る最高のまとめだと思っています。素人であれ、専門家であれ、必要な情報を簡単に入手できる形で書かれていますので」(4)

 そうロビンソンさんは自負する。

医療バイテクの専門家はGMOには警告する

Michael-Aatoniou.jpg 著者の一人、マイケル・アントニュー博士は、イギリスのキングズ・カレッジ・ロンドン医学部の分子遺伝学のリーダーで、遺伝子発現と治療グループのリーダーで、遺伝子工学技術を28年も用いて来た経験があり、40以上もの査読された論文があり、バイオテクの特許も数多く有している。博士は、医療のために遺伝子工学を用いているが、人間の食料や家畜飼料での使用に関してはこう警告する。

「口にしても安全だし、環境上も有益で、農薬への依存を減らし、収量を高め、世界飢餓を解決する助けにもなる。遺伝子組み換えは、こんな野心的な主張に基づいて推進されています。そこで、科学的な視点からこのテクノロジーに対してエビデンスを照合することが必要だと感じました。研究からは、実験動物への給餌試験や栽培環境に関して有害な影響を及ぼすことが示されています。農薬の使用量が増す一方、収量を増やすことはできていません。世界の食料ニーズを満たすには、もっと安全で効果的なオルタナティブがあるというのが私どものリポートの結論なのです」(1)

400人の科学者からなる国連の国際リポートと相反する明治大学教授の見解

2019111BS11.jpg 2019年11月11日にBS11で、山田正彦元農省と対談をされた明治大学の中島春紫教授は、内閣府食品安全委員会の遺伝子組換え食品等専門調査会座長なのだが「遺伝子組み換え技術によって30%も増収があるため食料危機に対応に有効である」と述べられているのだが(5)、アントニュー博士は、そうではないと指摘する。これは、博士が農業の専門家ではないためではないだろうか。

 けれども、世界銀行がスポンサーとなり、400人以上の世界の科学者によって2008年に発表された「開発のための農業科学技術国際評価」と呼ばれる国連のリポートがある(2,3)。同リポートは、世界を養うために遺伝子組み換え作物が必要だとの考え方を支持せず、遺伝子組み換え作物の収量は『変動する』とも指摘する。遺伝子組み換え作物の収量が多いことがあるのは確かだが、そうではないこともある(2)

 そして、慣行育種の方が、高収率で、栄養価も優れ、痩せた土地や変動する気象状況の中での収量はGMOを越すと主張する(3)。そして、安全性も懸念し、世界や将来世代を養う鍵はアグロエコロジーにあるであろうと述べている(2,3)

GMOがなければ世界が養えないは神話だ〜大半は除草剤をつかわせるため

 世界の増加する人々を養うための「不可欠なツール」として、GMOは推進されることが多い。けれども、多くの専門家は疑っている(1)。GMO技術がなければ、増加する地球人口を養えない。飢餓問題解決のために欠かせないとの主張はペテンにすぎない。それを否定する少なくとも半ダースもの事実がある(2)

 第一は、現実にGMOに挿入されている遺伝子は、除草剤耐性を産み出すか、農作物自身に農薬を作らせるものであることだ(2)。GMO作物の80%以上は、ラウンドアップのようなグリホサート・ベースの除草剤の大量投下に耐性があるように操作されている。ほとんどの組換えは除草剤耐性か農薬を含むための組み換えであって飢餓解消の増収とは無関係の特性なのだ(1)。高収量がもたらされると主張されているのだが、現実には収量を高めるための遺伝子は組み込まれていないのだ。というよりも、高収量は遺伝子の複雑な相互作用に依存することから、それを可能とする遺伝子操作のやり方はないし、まだGMO技術によってもたらすことはできない(2)

 それどころか、ある場合ではGMOの方が非組換え作物よりも収量が低い。GMOダイズの場合では、まさにそうで、収量低下と知られている。なぜ、そうなのか。原因は正確には解明されていないのだが、クリア・ロビンソンさんはGMOプロセスでの破壊的な影響に起因するのではないかと考える。あるいは、GMO作物では、除草剤に抵抗するために大半のエネルギー使い果たされ、成長のためにはより少ないエネルギーしか残されていないからかもしれない(2)

高収量は在来の育種の賜物だった

 これに対して、高収量を実現するうえで有効なのは従来の育種だ。米国農務省(USDA)自身が、高収量は作物が持つ遺伝子に依存し、遺伝子組換えによるものではないことを認めている。つまり、高収量とされる遺伝子組み換え作物は、高収量を産み出すように育種された慣行作物であって、そこに、除草剤耐性や害虫耐性遺伝子が挿入されているだけなのだ(2)

 実際、ある種の「スーパー作物」は、マーカー選択のところで非GMOでのバイテクの助けを借りただけであって、慣行育種の産物なのだが、それでもGMOによる大成功だと主張されてしまう(1)

 GMO技術を用いてβカロチンを増量したゴールデン・ライスも、栄養失調の人たちのビタミンA欠乏を克服する助けになるとして奨励されているが、毒性の安全検査もなされず、何百万ドルもの研究資金が12年以上も投じられた後も、いまだに市場流通していない。ビタミンA欠乏に対してはより経費もかからず効果的な解決策もある。けれども、こちらは、資金不足のために活用されていない(1)。これをペテンと言わずして何と言おう。

土壌の破壊こそが食料問題にとっての最大の危機

 不耕起農法では、雑草防除のための耕起が避けられ、除草剤が使われている。けれども、これも耕起農業よりも気候に優しいわけではない。より深い土壌の炭素濃度を測定してみると、不耕起農法の圃場は、耕起された圃場よりもカーボン含有量が低い。除草剤耐性作物で散布される除草剤のために、不耕起農法は環境に優しくない。GMOを用いた農業では、それに伴い使用される除草剤によって土壌微生物の健康が破壊されるといえるだろう(1)

Claire-Robinson.jpg さらに、グリホサートを散布することで、土壌中の金属養分が縛られてしまうこともわかっている。「栄養分を植物がよく利用できなくなれば、こうした植物を食べるとき、私たちもよくそれを利用できないようなるのです」と、クレア・ロビンソンさんは言う(2)

 つまるところ、植物を育てるには、土壌微生物が必要であって、高収量をもたらすのは微生物と作物との共生関係だ。となれば、食の未来にとって、最大の脅威は表土の破壊であって、今のようなやり方を続けていれば、たとえどのような遺伝子組み換え作物が産み出されたとしても、人々が飢えることは避けられない。一方、伝統農業は土壌の健康を守り育てることから、ひとたび再生農業が実施されれば、高収量はほぼ自動的に産み出されることになる(2)

 ロディール研究所でなされている長期的な研究はそのことを示している。微生物を含めて土壌の健康が構築されるため、有機農業での収量は年々あがっている。土壌中の有機物含有量が多ければ、スポンジのように作用して保水力もあるために旱魃時でも収量がよい。

 もし、気候変動を含めて人類が将来的に直面するであろう危機を乗り切れるレジリアンスのある農業があるとすれば、それはまさに、アグロエコロジーや有機農業での土づくりにあるのであって、グリホサート他の農薬で土壌を殺すことではない(2)

なぜ、農民たちはGMO種子を選ぶのか?

 農民たちがGMOを次々と選んでいるのはGMO作物が非GMO作物よりも優れている証だと思われるかもしれない。けれども、これも違う。ひとたび、GMO企業が種子市場を乗っ取れば、市場からはGMO以外の種子が退場してしまう。この状況では「農民が選択しているから」という概念はあてはまらないではないか。

 さらに、非GMO作物がGMOによって汚染されることは、最も深刻だ。汚染製品の回収、訴訟、市場の喪失と莫大な金銭的な喪失にゆきつくだけだ。

 クレア・ロビンソンさんは言う。

「GMO企業は、いま私たちの食べ物を変えようとしています。ですから、何が起きているのかを知らせ、私たちのフードシステム、種子を確実に手にする必要があります。GMO作物についての幅広い理解やすでに成功している持続可能な選択のために、このリポートが役立つことを望みます」(1)

【画像】
スティーブン・M・ドルーカー博士の画像はこのサイトより
クレア・ロビンソン(Claire Robinson)さんの画像は文献1より
マイケル・アントニュー(Michael Antoniou)博士の画像は文献1より
【用語】
開発のための農業科学技術国際評価(IAASTD)
【引用文献】
(1) Peter Brown, Why genetically engineered food is dangerous: New report by genetic engineers, 17 June 2012.
(2) Dr. Mercola, New Book Sets Record Straight on GMO Myths and Truths, April 24, 2016.
(3) GMO Myths & Truths
(4) The book GMO Myths and Truths: A Citizen's Guide to the Evidence on the Safety and Efficacy of Genetically Modified Crops and Foods is now in its 4th edition.
(5) 2019年11月11日、BS11の番組「インサイドOUT」で「ゲノム編集食品解禁!食の安全は大丈夫?」以下のリンクで11月27日まで放送
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