2020年06月05日

コロナ以降の世界、アフターコロナは平飼養鶏、養豚、草地放牧なのでは?

ジェーン・グドール登場〜このままでは人類は滅亡する

 2020年6月2日、NGO世界農業における思いやりは、オンラインで、グドールとの対談を仕掛けた。そこには、オンラインのイベントで2人の欧州委員会の委員も参加した。

「畑からフォーク戦略」を打ち出したキプロス出身のステラ・キリアキデス(1956年〜)保健衛生・食の安全委員と農業を担当するヤヌシュ・ボイチェホフスキ(1954年〜)委員だ。

2020060401.jpg ジェーングドール博士は、コロナウイルスのパンデミックや気候危機に対応して、いまフードシステムを大幅に改変しなければ、人類は「滅亡」すると警告する。そして、未来のパンデミックを防ぐため食習慣の見直しを呼びかける。

 まず、グドール博士は、コロナウイルスが発生した原因を森林伐採、生物種の絶滅、自然の生息地の破壊等、自然界を過剰に開発したためだと指摘する。あわせて、工業型畜産も家畜の病気の貯蔵庫となっているとグドール博士は言う。

「動物と環境に対する私たちの不敬のため、これを自らもたらしたのです。野生動物に対する私たちの不敬と飼育動物に対する私たちの不敬が、病気が波及して人間に感染する可能性があるこの状況を作り出したのです」

 そして、病気と気候を破壊する脅威から、自然の生息地の破壊を止め、工業型畜産を廃止することが緊喫の課題とグードル博士は言う。工業型畜産は健康を脅かす抗生物質耐性菌の増加とも関連する。

「別のことをしなければ、私たちは終焉してしまいます。こんなことは長く続けることはできません」(3)

致死率60%のパンデミックが襲ってくる世界

 米国においては、コロナウイルスの死亡率は2%以下だった。けれども、これが例えば、鳥インフルエンザH5N1であれば、その死亡率はぐんと高まり、疾病予防管理センターによれば60%にも及ぶ。2017年にはH5N1型による死者が急増した後、原因が不明なままウイルスの拡散は鎮静化した。けれども、これは安心はできない。20年以上も疾病予防管理センターで新型インフルエンザ対策にかかわってきたウイルス研究者、ナンシー・コックス博士は、こう強調する。

Nancy-Cox.jpg「H5N1がパンデミックの比率に達しなかったということは、核兵器に匹敵するウイルス突然変異のごくまわりをテロリストが蹴っ飛ばしているということです」

 致死率60%とは、現在の状況の30倍になるということだ。人類滅亡というグドール博士の警告が大げさではないことがわかるだろう(1)

 コロナウイルスは、2019年末に動物から人間への移ったと考えられており、おそらく中国の武漢の食肉市場に起源がある(3)。そして、コロナウイルスの発生源がコウモリ等の野生動物集団の場合であれば、人間とのその相互作用を規制することが最良の解決策だ。ことこのことに関しては、温度差こそあれ、ゆっくりとではあるが、正しい方向に政策は向かっている。中国の武漢ではウェット市場を介して多くの人々がウイルスに感染したことから、中国政府は19,000もの野生生物の飼育業を閉鎖し、ウェット市場のける野生動物の肉の販売禁じた(1)

 けれども、いま、パンデミックのリスクを減らすため、家畜の健康にも目を向ける必要がある。マスクの生産には夢中になっていても、パンデミックを生み出している農場には関心がないからだ(1)

 今も、コロナウイルスがどのようにして出現したのかは完全には解明されてはいない。けれども、鳥インフルエンザH5N1や豚インフルエンザH1N1等のパンデミックウイルスに関しては、ルーツも原因も明確となっている。いずれも鶏肉工場及び養豚工場で進化したことが判明している。

 鳥インフルエンザH5N1を含めて、疾病予防管理センターが懸念すべきものとして現在特定している16株の新型インフルエンザウイルスのうち、11株は、H5またはH7タイプのウイルスに由来する。そして、2018年に、研究者は、39もの抗原不連続変異を解析した。これが、とりわけ、危険な菌株の出現で重要な役割を果たしたことがわかっているのだが、その結果から、2つを除くすべてが工業型家禽生産から出現したことが判明したのだ。そう。ヒトにも危害を与えるウイルスへと変異し、人間の免疫システムに馴染みがないため致命的でもあるウイルスが見出されたのは鶏肉工場なのである。また、遺伝子解析から、豚インフルエンザH1N1も北米の豚ウイルスから出現したことが判明している(1)

 そして、工業型畜産と疾病発生との関連性は、機関投資家の畜産業関連イニシアチブによる新リポートが報告しているのだが、その結果、大規模な肉、乳製品、魚の生産者の70%以上は、閉鎖した空間で飼育し、抗生物質を乱用し安全基準も緩いことから、人畜共通感染症を助長するリスクにさらされていることがわかった。

Jeremy-CollerS.jpg 機関投資家の畜産業関連イニシアチブの創設者ジェレミー・コラー(1958年〜)氏はヨーロッパで最も有名なオルタナティブ投資家の一人なのだが、こう述べる。

「工業型畜産は、パンデミックに対して脆弱であり、それを産み出すことから有罪だ。それは生命を危険にさらす自己破壊のサイクルだ。次のパンデミックを引き起こさないために、食肉業界は、食品と労働者の双方に対する厳格な安全基準、厳重に閉じ込められた飼育や過度の抗生物質使用に対処する必要がある」(3)

もしも、こんな国があったとしたらどう思う?

 あなたの国では、きちんと社会的な距離をとっているのに、その隣国では数万人もの市民を体育館に詰め込むことによってコロナウイルスに対応していることをイメージしてみてほしい。おまけに、こうした悪条件下においても市民の生産性を維持させるため免疫力をぶっこわす副作用があることがわかっているのに、薬剤を打たれていることをイメージしてみてほしい。そして、このディストピアを完成させるため、この隣国では同時に医師の数を10分の1に減らしているのだ。このような措置を講じれば、国内のみならず、あなたの国内もとばっちりを受けて死亡率が劇的に高まるのではあるまいか。病原体は国境を越えてくるからだ。

 おまけに病原体は生物種の壁も超えてくる。インフルエンザとコロナウイルスが国家間を動き回るのと同じく、ヒトと動物の集団間も動く。ことパンデミックに関しては、韓国の健康もフランスの健康も、そして、ヒトの健康も家畜の健康も同じことなのだ。社会的距離は、誰しもが実践するときにのみ機能する。そして「すべて」には家畜も含まれるのだ(1)

 今日、私たちが口にしている肉は数万頭がケージに詰め込まれ、遺伝的に画一化され、免疫不全で、定期的に薬品を投与された家畜からのものだ(1)。例えば、米国の工場型畜産場には90億頭を超える家畜が詰め込まれ、毎年、数億頭が屠殺場に到着する前に死んでいる。肉用に飼育される鶏も、通常の4倍の速さで成長するように遺伝子を改変されており、それは痛みを伴う病気を引き起こすため、数百万羽の鳥が屠殺される前に死ぬ。とはいえ、成長が早い鶏が生み出す利益がコストを上回っていることから、こうした死を業界は受け入れている(2)

 そして、世界中で、企業は公的資金を活用して、工業型畜産を促進する政策を創り出すことに成功してきた(1)。米国でもアグリビジネスは、数十年にわたって工業型畜産を運営するため政府の補助金を活用してきた。例えば、2018年に発表された研究によれば、2015年の酪農業界の収入の73%、220億ドル以上は政府からのもので、貿易赤字でも2018年は140億ドル、2019年160億ドルを受領している。そして、水等の希少な資源を市場価格以下で優先的に利用し、労働、環境、動物福祉他の法律を免除してコストを外部化できている。

 例えば、工業型畜産と食肉処理場では、困難で危険な作業を低賃金で実施させるため、アグリビジネスは移民労働者や刑務所の労働者を搾取する措置を得ている。システムが利潤をあげる限り、そこで飼育される動物もそこで働く労働者も消耗品なのである(2)

食生活を改め、工業型畜産の製品をボイコットせよ

 さらに、今回のコロナウイルスでは、食肉処理場が病気の繁殖地となったため、何千人もの労働者が病気になり、数十が閉鎖されサプライチェーンも混乱した(2,3)。屠殺場での労働者の感染の蔓延から慢性的な労働力不足に直面し、サプライチェーンに流れることなく、何百万ものこうした家畜は殺されて捨てられた。

 食肉や乳製品産業はすでに月額2億ドルを受け取っているのだが、アグリビジネスはさらに多くのマネーを得て、これまでどおりの産業に戻すためのロビー活動をしている。そして、トランプ大統領はこうした操業を開始するよう命じた。けれども、人、動物、地球を傷けるこうした産業は、解体し交換されるべきだし、政府の救済措置を受けるべきではない(2)

 さらに、ある軍人が「最近、ある軍事教練所にいたのだが、そこにいたのはほぼ全員がテロリストだった」と語ったにもかかわらず、政治家が誰一人としてその施設を調査しないと言っているシーンをイメージしてみてほしい。さらに、こうしたテロリストが人類史でこれまで使用されどの兵器よりも破壊的な武器を開発していることもわかっていることを想像してみてほしい。実は、パンデミックと工業型畜産に関しては私たちがおかれているのはこんな状況なのだ。

 けれども、そのことに対する世間の理解が不足しているため、悪意ある企業はまったく見当違いの方向へと政策を進めることができている(1)。なればこそ、グドール博士は、富裕階層が政治家たちに圧力をかけていることから、工業型畜産を行う企業に対して「私たちは彼らの製品の購入を止めなければなりません」とボイコットを呼びかける(3)

 さらに、グードル博士は、問題の根底にある人々に貧困にも目を向ける。それ以外に術がなく、家族を養うために必死で森林を切り開いている人たち。最も廉価な食べ物を選ぶ以外に選択の余地がないため被害を受けている都市の人たち。そして、戦争と暴力も自然破壊を助長したと警告し、過度の消費主義と食生活を改めることを呼びかける。そして、もはや残された機会はごくわずかないとし「私たちは自然界との関係でターニングポイントを迎えています」と警告する。

「この危機から学んだ教訓のひとつは、自分たちのあり方を変えなければならないということです。科学者たちは、将来の危機を回避するため、私たちの食生活を大幅に変え、植物が多い食事に移行しなければならないと警告しています。動物、地球、そして子どもたちの健康のためにです」(3)

工業型畜産へのオルタナテイブを求めるとき

 確かに、家畜たちの死は悲劇的だ。けれども、通常のビジネスの過程で発生する何十億もの死もそうだ。それ以外の動物を利用したり、消費したりせずによく生きることができる。

 パンデミック以降の世界に目を向けてみよう。もっとレジリアンスがあり、持続可能なフードシステムをイメージする必要がある。それは、衆生の命を商品化しないものだ。

 米国では、現在、工業型畜産のために、作物生産の10倍もの多くの農地が使われている。これを植物ベースの農業にシフトすれば、より少ない農地と資源で多くの人々に食料を供給できる。生態系への負荷も大幅に軽減され、数百万haもの土地が解放される。現在、家畜飼料用の石油化学製品を使用してモノカルチャーを栽培している農地には、マメ、穀物、果物、野菜、ナッツ、種子他の生産に切り替えることができる。肉の代わりに植物を食べることにシフトすれば、自然生態系、野生生物の生息地、生物多様性を取り戻すことができる。それは地球が再生し、治癒し、気候変動他の動物や環境の乱用に関連している将来のパンデミックからの脅威を減らすことを可能にする。

 また、パンデミックの中でサプライチェーンの脆弱性も明らかになった。消費者は生産者とより密接につながり、より短くシンプルな流通を求める必要がある。郊外の芝生も菜園に変えることができるし、都市では、学校や教会の庭、屋上、食用林、コンテナや植栽箱、さらには放棄された空き地や建物を再構成した垂直農場で食料がすでに生産されている。これは奨励されるべきポジティブなトレンドだ。パンデミックによって拍車がかかったガーデニングに対する幅広い関心もさらに奨励されるべきだ。

 第二次世界大戦中のビクトリーガーデンは自国の農産物の40%を生産できたが、家庭菜園は、私たちが想像している以上に多くの食料を供給できる。都市農業、ファーマーズマーケット、CSA農業プログラム、コミュニティガーデンは、栄養価が高い食品や有意義な仕事を提供できる。これらは、工場型畜産や食肉処理場の代わりに、もっと政府からの支援を受けるに値する。

 未来に目を向けて、ファクトリー農場や食肉処理場がない、新しい「ノーマル」なものを創造しよう。人々と家畜の双方に多大な痛みと苦しみをもたらす壊れた現状に戻るのではなく、活気のあるコミュニティを維持し、栄養価の高い食料を生産する、より健康で多様なシステムをサポートするように方向を変えるべきなのだ。そして、それは、私たちの側からすれば、端的に言えば、肉を食べることを減らす、あるいは、食べることを止めるときなのだ(2)

いま時代は転換点?

Jeremy-Coller.jpg「地球を救うことは朝食から」の著作のあるジョナサン・サフラン・フォーとサンディエゴ大学のアーロンSグロス准教授はこう述べる。

「工業型畜産とパンデミックのリスクの高まりとの関連性は、科学的にも十分に確立されているが、そのリスクを削減するという政治的な意思は過去には存在していなかった。今こそ、その意志を構築する時だ。これについて語り、友人と懸念事項を共有し、子どもたちにこうした問題を説明し、どのようなやり方で食べるべきかを問いかけ、政治指導者を呼び、工業型畜産と闘うアドボカシー組織を支援する。もちろん、世界で最も強力な産業コンプレックス、工業型畜産を変えることはおそらく簡単ではない。けれども、おそらく私たちの人生で初めていまそれが可能になっている。私たちを不安にさせる非常に不確実性はまた、すべてがより良く変化する可能性があることも思い出させてくれる」(1)

 では、本当に時代は変わるのだろうか。グドール博士とともに参加したヤヌシュ・ボイチェホフスキ農業委員はこう述べた。

「私たちは、工業型農業のオルタナティブとして、持続可能な農業と育種の実践を常にサポートする」

 そして、ステラ・キリアキデス保健衛生・食の安全委員はこう述べた。

Stella−Kyriakides.jpg「EUは新たに発表された農業と生物多様性の戦略、そして、欧州グリーンディールを通じて懸念に対応しています。こうした戦略は農薬の使用を削減し、生物多様性を奨励します。非常に集中的な農業システムは食料を豊富には生み出してきましたが、少なくとも欧州においてはかなりの廃棄物があり、時には家畜の痛みもあります。こうした現象を私は深く懸念します。倫理的にも疑わしく、社会的にも環境的にも受け入れ難い。私ども市民はより多くを期待しています。農業が持続可能なものであり、食料が手頃な価格であることを保証すべく私どもは良いバランスを提供してまいります」(2)

編集後記

 コロナウィルスが工業型畜産と密接に関係していることは昨日のブログで記載したが、それは前から紹介しているF2F戦略とも連動しており、6月2日とつい数日前にも大物ジェーン・グドール博士を引き出してきたのだ。よくぞ、しかけたるものかな。なんという欧州NGOのしたたかさであろうか。ちなみに、グドール博士は、26歳の若さでタンザニアのゴンベで、警戒心が強い野生のチンパンジーに近づき共に暮らす中で、チンパンジーが自ら道具を作り使うことを発見し世界に衝撃を与えた世界的に著名な科学者である。 ガイアシンフォニー第4番にも出演しているし、 2017年に国連大学で開催されたコスモス賞25周年記念シンポジウムでは、皇太子殿下と雅子妃殿下と歓談、翌日には皇居で天皇皇后両陛下とも歓談。さらに、京都大学からも京都大学名誉博士の称号を授与している。ニュアンス的には違うかもしれないが、今西錦司博士あたりが現職の閣僚と緊急シンポジウムを行い、現職の厚生労働大臣が「いいですね、脱コロナのために、平飼養鶏とオーガニックでいきましょう」と発言してしまったのに匹敵する衝撃度だ。

 なお、こうした情報をいち早くキャッチして発信しているのが、長谷川浩博士である。博士は、長谷川浩博士は2020年6月1日付のフェイスブックで「農林水産省は感染症予防対策としての家畜放牧禁止を見直して下さい」という市民が発信している情報を紹介している。

 そして、以下のようなメッセージを記載されている。

「スーパーで売られている肉と卵は、鳥、豚、牛を狭いところに閉じ込めて、餌は外国産のトウモロコシや油を搾った大豆粕などを与えます。鳥や豚では工場のような建物に閉じ込めて行われることから工業型畜産といいます。餌の生産過程で森林を破壊し、窒素肥料が海や湖に流れて水を汚染し、飼われている鳥、豚、牛は動く生き物である動物なのに、十分な運動ができないなど環境破壊の元凶で家畜福祉も尊重していないであると問題だらけだと、世界中で非難されています。

 日本でも牧草地や畑に放牧する方法を牛だけでなく豚、鶏でも実践している農家がわずかながらいます。十分な運動をして健康に育ち、肉や卵は美味しいと評判です(略)。ところが、日本の行政は閉じ込める工業型畜産一点張りで、豚の放牧禁止に舵を切ろうとしています。理由は、豚熱(以前は豚コレラと呼んだ)を防止するためだそうですが、そもそも、閉じ込めても、他の予防措置をとっても豚熱は防げるどころか、拡大の一方です。これらのことを総括もしないで、突然放牧を禁止しようとはあまりに唐突で科学的根拠もありません。個人的な見解ですが、家畜福祉に配慮して健康に育てることこそが豚熱などの感染症を防げると考えています。これは、人間の感染症(今回の新型コロナウイルスも)も同じです。

 よかったら、健康な家畜を育てるための放牧守るように声を一緒にあげてもらえませんか。なお、農水省ではパブリックコメントも募集しています。締め切りは6月11日と短いですが、よかったらこちらもお願いします」

 農水省は放牧は奨励もしているのだが、この博士の情報を見る限り、既存の豚コレラや鳥インフルのリスクを抱えた工業型畜産業を見直すどころか、オルタナティブとして世界が着目している平飼養鶏や養豚をコロナ禍にかこつけて禁じようとしているのではあるまいか。なんという日本国中央政府の力であろうか。ガーディアンでジョナサン・サフラン氏が「もし、こんな隣国があったとしたら」として例に引いた国そのものになってしまうではないか。ちなみに、機関投資家の畜産業関連イニシアチブは、日本企業の日本水産、プリマハム、日本ハムの3社を評価しているが昨年と同じく依然「高リスク」と評価している。例えば、仮に日本国中央政府が「大丈夫である」と太鼓判を押したとしても、かってのリットン調査団のように、世界は別の評価を下してしまう。名作アニメ、地球少女アルジュナでは、遺伝子組み換えで汚染された日本は、危険地帯として世界から封鎖される。このアニメが正夢にならないことを願いたい。

【用語】
● 世界の農業における思いやり(Compassion in World Farming)。1967年に設立され、動物の生きた輸出、家畜の屠殺、工場型農業に反対するキャンペーンとロビー活動を行っている。
●抗原不連続変異(antigenic shift、抗原シフト)。2つ以上の異なるウイルス株あるいはウイルスに由来する表面抗原が組み合わさって新しいサブタイプのウイルスが形成される一連の過程。インフルエンザウイルスにおいてよく認められる。
●疾病予防管理センター(Centers for Disease Control and Prevention= CDC)。ジョージア州アトランタにある保健福祉省所管の感染症対策の総合研究所
シンポジウムの写真はこのサイトより
機関投資家の畜産業関連イニシアチブ(Farm Animal Investment Risk and Return=FAIRR)
サンディエゴ大学(University of San Diego)
【人名】
ヤヌシュ・ボイチェホフスキ(Janusz Wojciechowski)委員
ジェレミー・コラー(Jeremy Coller)氏の画像はこのサイトより
ジョナサン・サフラン・フォー(Jonathan Safran Foer)
アーロンSグロス(Aaron S Gross)准教授の画像はこのサイトより
ナンシー・コックス(Nancy Cox)博士の画像はこのサイトより
【引用文献】
(1) Jonathan Safran Foer and Aaron S Gross, We have to wake up: factory farms are breeding grounds for pandemics, The Guardian, 21 Apr 2020.
(2) Gene Baur, It's time to dismantle factory farms and get used to eating less meat, The Guardian, 19 May 2020.
(3) Fiona Harvey, Jane Goodall: humanity is finished if it fails to adapt after Covid-19, , The Guardian, 3 Jun 2020.
posted by fidel at 07:00| Comment(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年06月04日

コロナ以降の世界、アフターコロナはアクチンでいいのか?

はじめに

 2020年6月2日の毎日新聞に「2021年前半開始」国民全員に接種 新型コロナワクチン巡る厚労省プラン」という記事が出た。

 これに対してさっそく市民派のフェイスブックでは「コロナにかかっても軽症で済む子どもたちにワクチンいらない。そもそもワクチンは効かない。60歳以下の致死率も0.04%で、国民全員ワクチン強制接種は憲法違反だ」という声が飛び交っている。

 とはいえ、今回のコロナをはじめとするパンデミックの原因が実はファクトリーファーミングにあり、ワクチンは解決策にはならないとの論調がガーディアン等ではなされている。したがって、これを緊急的に紹介したい。

コロナの原因はどうも中国人の野生動物食のようだ

 パンデミックを引き起こしたコロナウイルスはどこからやって来たのだろうか。中国の武漢の食品市場にどうやって侵入したのだろうか。この謎に対する答えが次第に明らかになりつつある。まずことの発端からたどってみよう。今回の新型コロナウイルス(Covid-19)が自然進化の産物であることは判明している。

 カリフォルニア州のラホーヤにあるスクリップス研究所の感染症の専門家、クリスチャンGアンダーセン教授らが実施した遺伝子配列の研究からは、このウイルスが研究室で造り出されたり、操作された可能性は否定されている。

 2020060301S.jpg次のステップはやや不確かだが、このウイルスを保有していたのはコウモリだったらしい。アンダーソン教授らは、新型コロナウイルスの配列がコウモリに感染する他のコロナウイルスと類似していることを明らかにしている。そして、今回とは別のコウモリのコロナウイルスは中間宿主を介してヒトに感染しているが、今回もそうで、その動物は「センザイコウ」だったらしい。

 そして、一部の中国人がこれを好んで食することから、新鮮な肉や魚介類他の農産物を販売する「ウェット市場」において「センザイコウ」は売られていた。そして、新型コロナウイルスとセンザンコウに感染する他のコロナウイルスとの遺伝子配列の類似性も見出されている(2)

「我々の研究は、ウイルスの地理的な起源に直接光を当てるものではないが、入手可能なすべての証拠は、それが中国内部にあったことを示している」。

 そう、アンダーセン教授は言う。となれば、トランプ大統領が新型コロナウイルスを「中国のウイルス」と呼ぶことはやはり正しい(2)。

 かくして、コロナウィルスの犯人として挙げられているのは、コウモリとセンザンコウであって、野生動物が中国で食されていることが問題視されている。米国最高の疫学者、国立アレルギー・感染症研究所のアンソニー・スティーヴン・ファウチ(1940年〜)所長もこう語る。

「通常ではない人間と動物のインターフェースから発生するあまりにも多くの疾患があることに驚かされる」

 所長は、パンデミックの犯人として中国の「ウェット市場」を問題視する。共和党のリンゼー・オーリン・グラム(1955年〜)上院議員も中国のエキゾチックな動物の貿易を批判する(3)

 コロナウイルスの起源が、中国の「ウェット市場」である疑いが濃厚なことから、自然保護者、ビーガン、動物保護団体や福祉団体からのWHOや各政府に対する声は高まっている。例えば、イギリスのWWFもこう主張する。「我々は違法で規制されていない野生生物市場の閉鎖を求めてきた。珍味と見なされることが多い、野生の絶滅危惧種の違法な消費を懸念する」(1)。著名な自然保護者、ジェーン・グドール(1934年〜)博士も「グローバル禁止」を呼びかける(3)。生きた動物の商業貿易の世界的な禁止のみならず、すべての野生動物を食料として狩猟することも止めるべきだとの主張もなされている(1)

なぜ、いまコロナのパンデミックが起きたのか〜その謎を解くカギはアグロエコロジー

 とはいえ、ストーリーはそれほど単純ではない。ファウチ所長やグードル博士が主張するように「エキゾチックな動物」の取引の取り締まりを強化することは正しい。けれども、そこだけに注視するとこの問題が現在の食料生産のあり方と密接に絡みあっていることが見落とされてしまう(3)。論理的に考えてみよう。コウモリとセンザイコウがコロナウイルスの感染経路であるとすれば、そこには二つのインターフェイスがある。ヒトとの中間ホスト、すなわち、センザンコウと、センザイコウとコウモリとのインターフェイスだ。関心のほとんどは、前者に向けられ、その責任は中国の「ウェットマーケット」と食習慣のためだとされている。けれども、例えば、20年前ではなく、なぜこの時期にパンデミックが起きたのだろうか。というのも、西側諸国が「エキゾチック」とみなす中国人の食習慣はいまになって始まったものではないからだ。しかも、パンデミックが生じるには二つのインターフェースが必要だ。コウモリからセンザンコウや他の野生・半野生の中間宿主に対する感染はどこでどのように発生したのであろうか(2)

Rob Wallace.jpg ここでアグロエコロジーが登場する。ミネソタ州セントポールにあるアグロエコロジーと農村経済研究団の進化生物学者ロブ・ウォレス博士はこう指摘する。

「コロナをウイルスと文化的な食習慣のせいにすることはできるが、その因果関係は人とエコロジーとの関係性にまで及ぶ」(2)

 実は、1990年代以降、中国ではその経済改革の一環として、フードシステムを大規模化工業化させてきた。人類学者、シンガポール工科設計大学のライル・ファーンリー准教授とセント・アンドルーズ大学クリストス・リンテリス講師が指摘するように、このひとつの副作用は、小規模農家が畜産業から追い出されたことだった(2)

 生計を立てるため、新たな方法を模索する人たちの中には、以前はサブシステンスのためだけに食されていた「野生種」の養殖に目を向けた人もいた(2)。そして、中国政府も、大規模畜産業によって小規模畜産農家が失った市場を補完するため、野生動物を飼育することを奨励した(3)。こうして「野生食(ワイルドフード)」は正式化され、高級品としてますますブランド化された。

 それだけではない。小規模農家は経済的に追い詰められただけではなく、大規模工業型農業が多くの農地を占有したため、これまでは耕作不可能であったゾーン、すなわち、森の端へと地理的にも押し出された。そう。コウモリやそれに感染するウイルスが潜んでいる場所の近くにだ。かくして、ウイルスとコンタクトする密度と頻度が高まった。となれば、これまで撹乱されてこなかった自然生態系に押し出される農民が増えたことが、人畜共通感染症の増加の一因となっていることになる(2)

エボラやエイズも小農を追いやったグローバルフードが原因で発生

 今回のコロナウイルスだけではない。なるほど「Covid-19」は「武漢ウイルス」と称されている。けれども、「人獣共通感染症」は中国だけでなく世界中で出現し、かつ、その発生頻度も高まっている。例えば、1918年のスペイン風邪も、おそらくは、その起源は米国中西部の養豚場だ。

 1993年、米国南西部ではハンタウイルスが発生したが、これも生態学的な不安定化が原因だ。オーストラリアではヘンドラウイルスとメナングルウイルスが発生し、エボラレストンウイルスとドイツで発生したマールブルクウイルスは、実験室で使用するために輸入されたサルから発生した。すなわち、危険な野生生物取引が行われているのは中国だけではない(3)

 同様に、HIVとエボラが発生したのも(2,3)、1970年代に外国のトロール船によって、地元の漁師たちが沿岸水域から追い出され、その後に西アフリカで「ブッシュミート(bush meat)」への依存度が高まったためとされる(2)。要するに、一見すると奇妙に思われる珍味への人々の嗜好ではなく(3)、問題の本質は、グローバルな利益主導型のフードシステムにある(2,3)

Philip-LymberyS.jpg イギリスのNGO、「世界農業における思いやり」のフィリップ・リンバリー(1965年〜)氏は、工業型農業は野生生物に対して壊滅的な影響を与えると語る。

「工業型農業が野生生物の減少と世界に残された野生地の破壊の主要な推進力だ。家畜を小屋で飼育することは効率的に思えるが、その餌を生産するのに広大な土地が必要となり、それが、野生地への侵入と生息地の破壊を引き起こす。動物に対して想像を絶する苦痛を引き起こし、さらに環境破壊も引き起こす。そして、次のパンデミックの完璧な繁殖地を作るであろう。工場型農業とパンデミックとは強く関連する。未来のパンデミックの主な原動力は工場型農業なのだ」(1)

鳥インフルエンザが危険化したのは遺伝的均一化が原因

Michael-WorobeyS.jpg アリゾナ大学の進化生物学者、マイケル・ウォロビー教授は、人間を含めた様々な宿主からインフルエンザウイルスのシーケンスを収集し、系統図にプロットすることで、時間とともにインフルエンザがどのように進化してきたのかを研究している。

 インフルエンザは絶えず変異する。それが、毎年インフルエンザワクチンを更新することが必要となる理由だが、変異速度は宿主によって違う。このことから、過去の中間宿主やそれが蔓延したおおよその時期が探れる。ウォロビー教授によれば、確実ではないが、インフルエンザは、約4,000年前に中国で飼育されていたアヒルから最初に人間の病気になった可能性がある。とはいえ、豚がインフルエンザの感染源であった可能性もある。また、ウォロビー教授はインフルエンザウイルスの中間宿主は鳥だけではないと考える。例えば、約1世紀前までは馬からインフルエンザに罹患していた。交通手段として自動車が馬に取って代わるとともに、西半球で家禽類の繁殖が拡大し、鳥がインフルエンザの中間宿主となった可能があるとウォロビー教授は考える。

Wendy-Barclay.jpg 誰もが教授の仮説を支持しているわけではない。ロンドンのインペリアルカレッジのウイルス研究者、ウェンディ・バークレー教授は「もし、馬がかつてのインフルエンザの主な媒介宿主であったとすれば、ほとんどの哺乳類は鳥インフルエンザウイルスに対して適応しているはずだ」と述べる。

 米国国立アレルギー感染症研究所のデビッド・モレンス博士は、馬は一時的な迂回であった可能性がより高く、人間のインフルエンザの主な中間宿主は、常に鳥、とりわけ、野生のものであったと考える。

 けれども、土地やその他の動物種の利用によって、人類がこうした宿主と病原体との関係性を形作ってきたことには誰しも同意する。そして、ウォロビー教授が指摘するように、現在の人類は過去とは前例がない規模でそうしている。例えば、飼育されたアヒルはおそらく野生のカモよりも多い(2)

 そして、前述したのとは別の理由からも、近代的なアグリビジネス・モデルは人獣共通感染症の出現に貢献している(2)

Marius-Gilbert.jpg「その出現と集約化された家禽生産システムの間には明らかに関連性がある」とベルギーのリブレデブリュッセル大学の疫学者マリウス・ギルバート博士は述べる(2)

 鳥インフルエンザウイルスは、過去500年間で推定15回のパンデミックを引き起こしているのだが、その頻度は近年ほど増え、国際獣疫事務局によれば、高病原性鳥インフルエンザH5N1とH7N9は、米国、ドイツ、インド、サウジアラビアを含めた20か国以上で、現在25件以上も発生している(1)。そして、ロブ・ウォレス博士の2016年の著作「Big Farms Make Big Flu」にはその理由がこう記載されている。

factory-chickensS.jpg 鶏、七面鳥他の家禽が工場農場に詰め込まれる密度。そして、赤身の肉等の望ましい特性のために数十年にわたって選抜がなされた結果、遺伝的に均一な傾向がある事実だ。こうした群れにウイルスが感染すれば、その拡散を妨げる遺伝的なばらつきがないためたちどころに拡散していく。そして、このプロセスがジワジワとウイルスの毒性を高める可能性があることも、実験と実世界での観察の双方で確認されている(2)

 ギルバート博士も、歴史的な感染時期を調べ、高病原性鳥インフルエンザのほとんどが商業型の家禽飼育で発生し、かつ、裕福な国、すなわち、ヨーロッパ、オーストラリア、米国では中国よりも頻繁に起きていることを見出した(2)

 さらに、ギルバート博士は、ウイルスの病原化は家禽類だけでなく豚でも起きていると指摘する。例えば、1980年代後半に米国で最初に報告された豚繁殖・呼吸障害症候群は、それ以来、世界中に広がり、最近中国で検出された株は、初期の米国のそれよりも毒性が強い。

Martha-nelsonS.jpg 米国国立衛生研究所のマーサ・ネルソン博士および同僚が実施した2015年の研究では、豚インフルエンザウイルスの遺伝子配列をマッピングし、豚インフルエンザの最大の輸出国であるヨーロッパと米国が豚インフルエンザの最大の輸出国であることも発見した(2)

工業型畜産へのマネー投資の後を追え

 すなわち、冒頭での述べたように野生の生息地に侵入すれば、家畜や人間に病原体が感染する機会が生じ、野菜の肉を食すれば病気にかかるが、これと同じく、工業型畜産の地獄のような環境も豚インフルエンザや鳥インフルエンザのような独自の病気を引き起こす(3)

Eric-Fevre.jpg リバプール大学で獣医感染症を扱うエリック・フェーブル教授も工場型畜産のリスクをこう指摘する。

「良い乳牛、良い肉牛、良い産卵鶏を選択するためその遺伝条件が非常に類似して集中的な条件下で暮らす家畜群を作り出す。こうした遺伝的に均一な大集団が影響を受けやすいため、非常に急速に広がる可能性があり、これが病気の発生のリスクを生み出す」(1)

 そこで、多用される抗生物質と非衛生的な状態が、病気を急速に拡大させる。SARS、BSE、豚インフルエンザ、鳥インフルエンザといった人畜共通感染症や大腸菌、MRSA、サルモネラは、工場型の家禽農場や養豚場で発生しているのだ(1,3)

 ちなみに、高病原性鳥インフルエンザH7N9の最初の人間に対する症例は2013年に中国で報告されているが(WHOによれば1568名が感染し、少なくとも615名が死亡)、これも中国だけの責任とはいえない。例えば、2008年の景気後退後、ニューヨークの投資銀行、ゴールドマンサックスは、その投資を多様化し、中国の養鶏場にシフトさせている。ロブ・ウォレス博士が、病気の原因を特定する際には、絶対的な地理ではなく、地理的な関係性、「マネーの流れをフォローせよ」と主張するのはそのためだ(2)

工業型畜産を救う必要があるのか

 研究者たちは、長年、工業型のフードシステムがもたらす影響に対して警告を発してきた。2016年に国連環境計画は、「家畜革命」は人類共通の災害だと警告してきた(3)

Ruth-Harrison.jpg すなわち、工業の規模の経済モデルを家畜生産に適用したことが禍のもとだった。「ファクトリーファーミング」という言葉が象徴するように、産業型畜産は、大量の家畜を飼育するだけでなく、イギリスの作家ルースハリソン(1929〜2000年)の表現を引用すれば、文字どおりの「アニマルマシーン」と見なして、牛乳、卵、肉を生産する。米国で発明された「工業型畜産業」は、現在、米国で販売されている肉の99%以上を占めている(4)。そして、肉の消費量は増え続けている(3)

 けれども、本物の機械とは異なり、アニマルマシーンは、経済的な混乱があっても単純にスイッチを切れない。コロナウィルスの感染リスクがあっても、食肉処理場が必死で運営し続ける理由だし、乳製品市場が崩壊しているにもかかわらず、酪農家が牛を搾乳し続ける理由だ(4)

 そして、いま、米国では、食肉処理場がコロナウイルス感染のホットスポットとなっため、操業停止を余儀なくされ現在、農民は何百万もの家畜を処分することを余儀なくされている。

 ニューヨーク・タイムズ、フルページの広告では、タイソン・フーズの最高経営責任者は「食品のサプライチェーンが破壊されている」と警告する。これに応えて業界を救うためトランプ大統領は、食肉処理場を重要なインフラと見なし稼働させ続けるための防衛生産法を制定した。

 また、USDAは食肉生産の食品安全検査規則を緩和し、190億ドルの農業救済を約束した。このすべては、フードサプライチェーンを保護するものとして組み立てられている。しかしながら、これは本当に救うべき産業であろうか。それは、さらに、ラインの速度をあげ、それによって労働者や公衆のリスクを高める(4)

 いま、ソーシャルメディアでは、ビーガンたちが、「もっと少ない肉を食べれば、コロナはなかっただろう」と発現している。この主張は主流のメディアから「ファルス」としてブロックされているが、この主張の一部は正しい。ビーガンたちが描く図式は単純すぎるとはいえ、工業型畜産がコロナウィルスに一役買ったとの証拠が今では強くなっている。

 ファーンリー准教授やリンテリス講師が主張するように、新たな人獣共通感染症の発生を防ぐには、中国のウェット市場をより適切に規制する必要があることは明らかだ。けれども、こうした市場の背後にある、世界でどのように食料を生産するのかについても検討する必要がある(2)。多くの疫学者、生態学者、人権や先住民族のグループは、野生の肉の取引を禁止するというグローバルな対応策は、非科学的、非生産的、文化的に不快だと主張している(1)。それよりも、地球と公衆衛生に対するストレスを緩和するよりレジリアンスのあるフードシステムが必要なのだ(3)

根本的な解決策はワクチンではない

 もちろん、多くの欠陥があるとはいえ、現在のフードシステムの大きな強みは、複雑だが比較的堅牢なバリューチェーンを通じて、大量かつ低コストで商品を流通できることだ。空になったスーパーの棚の写真が広く拡散されているとはいえ、現実のスーパーはまだ品揃えが豊富で、中米から輸送されるバナナ、欧州からの菓子、カリフォルニアのセントラルバレーからの新鮮農産物を購入するうえで問題はない。したがって、レジリアンスのあるフードバリューチェーンを再構築するうえで最もプラグマティックなやり方は、既存のシステムの強みを活用しつつ、最も脆弱でリスクが高い要素を代替えすることだ。問題はサプライチェーン全体にあるのではなく、工業型畜産農場にある。工場型畜産でのタンパク質の生産には非効率性とリスクが伴う。植物でタンパク質を得るよりも、肉を介せば1 桁多い投入資材が必要だ(4)。そして、抗生物質耐性や気候変動も悪化させる(3)。環境や公衆衛生に対するダメージは、将来の世代への借金でもある(4)

 そして、人畜共通感染の高まる脅威との闘いはより困難になっている。成長率を速め、過密状態の工場農場における病気の蔓延を予防する手段として、抗生物質が乱用されるため、ますます効果がなくなっている。抗生物質の乱用は、MRSAのような耐性菌の進化を促す。それは、ワクチンのような現代の解決策は対処できない。WHOは、2003年のSRASの発生制御時にも「接触の追跡、隔離という19世紀の公衆衛生戦略に勝る最先端医薬品はない」と報告した。これは今回のコロナウイルスにも該当する。

 したがって、短期的な優先事項としては、コロナウイルス用のワクチン開発があるとしても、今回の危機の根源に対処するには、さらに根本的な対策のことを考える必要がある。すなわち、グローバルなフードシステムを変革し、畜産業の終焉に向けて努力しなければならない。そして、これには次のような介入が必要だ(3)

工業型畜産を止めさせる 第一に、産業の最終的な廃止を目的として、産業型農業への補助金を終了し、環境と公衆衛生の外部性のコストを組み込むために畜産物に課税することだ(3)。安い肉があふれるという文化が生まれ、工業型畜産の非効率性がこれまでは見過ごされてきたのは、政府からの価格支援、保険制度、補助金が投入され、消費者が実際にコストを感じなかったからだ(4)

労働者への支援 同じく重要なことは、現在の危機によって、不可欠でありながらも、これまで過小評価されてきたことが判明した食と関係した労働者が、安全とより良い賃金を担保できるよう、それを保証する法律を可決することだ(4)。ウェットマーケットで肉を詰める労働者は、新しい病原体に最初にさらされる傾向があることも覚えておく必要がある(3)

植物ベースの新たなタンパク源の開発 主要な食品会社は、畜産業からダイベストメント(divest)し、画期的な食品技術を開発している多くの新興企業に対する投資をすべきだ。公的機関も瀕死のリスクが高い産業を支援して、現状を維持するために苦闘するのではなく、よりレジリアンスがあり、持続可能な(4)植物ベースの代替タンパク質に対する大規模な公的投資を行うべきだ(3,4)。植物ベースでのタンパク質生産は、畜産由来のものよりもエネルギーの浪費が少なく、農地、水、肥料、温室効果ガスの排出量の削減につながる。加えて、家畜製品とは違って、数時間または数日で加工製造ラインもオンオフできる。さらに、食肉産業のように労働者の健康と安全を危険にさらすこともない。そして、いま、植物ベースの肉は前例なき需要を経験している(4)。古い習慣は変われる。コロナウイルスが蔓延したことから、いま、マメの販売は急増している(3)。チキンは100万人の命がかかっていて実は安くはない(2)。公衆衛生の取り組みの一部であれば、人々は豆類を喜んで食べていける。この大流行が終わったら、さらに致命的な災害が発生しないようにそれを続ける必要がある。そして、植物性タンパク質への転換の科学研究や雇用が拡大し、人々はより健康的になっていく(3)

アグロエコロジーと都市農業へのシフト そして、現状に対するそれ以外のオルタナティブが必要だ(4)。牧場や飼料作物生産のため、畜産業は世界の居住可能面積の40%をむさぼり食っている。これに対して、植物ベースでのフードシステムは10分の1の土地しか必要としない。自然環境を回復することはニューディールの保護作物への公共事業プログラムを通じて雇用を創出する可能性がある。そして、人間と野生動物との接触を減らし、生物多様性を回復することにより、新しい流行の発生を減らす。すなわち、ローカルに生産される持続可能な植物農業への支援がより良い、より安全な農業の仕事を生み出しながら、土壌と野生生物への圧力を緩和する(3)

 アグロエコロジーと都市農業は、食料不足ショックに直面する地域コミュニティを健全にし、短期的に回復させるうえで適している。条件がよければ、小規模な農場は、大規模な工業型農場よりも持続的に運用できる。そして、ファーマーズ・マーケットやコミュニティ支援農業(CSA)は、多様なオルタナティブなサプライチェーンのモデルを提供している(4)

編集後記

 ロブ・ウォレス博士はこう語る。

「コロナウイルスは幸いなことに感染者の約3分の1を殺すH7N9やそれ以上に殺すH5N1よりも致死性がはるかに低い。これは私たちのライフスタイルの選択に疑問を投げかける機会を与える」

 そして、こう続ける。

「いまのグローバルで利益主導型の肉中心のフードシステムが私たちを病気にしている。根本的な再考が必要だ。だが、コロナウイルスのパンデミックは、世界のフードシステムを変革しなければならないことを示している。うまくいけば、これは、農業生産、土地利用、自然の保全に対する考え方を変えるだろう。人々はエコロジーや社会、疫学的な持続可能性に対するより高い基準を持つ政治家に投票するだろう」(2)

Jan-DutkiewiczS.jpg けれども、日本ではそうなるだろうか。例えば、今回の拙文のストーリーは、ガーディアンに投稿されたジョンズホプキンス大学で食の生産のあり方の政治学を研究するヤン・ドットキェーヴィッツ博士のものをベースとしているが、日本ではとてもその知のレベルにまで達しているとはいえない。嫌らしく聞こえるかもしれないが、編集子なりに、あえて三段階にわけてみるとこうなる。

ネトウヨ・レベル まず、ネトウヨレベルでは、緊急事態宣言解除の会見で主張された「日本モデルの力」が称賛されるであろう。これに対して、2020年5月28日付でノンフィクションライター窪田順生氏は「「コロナ収束は日本人のマジメさや清潔さのお陰」という勘違いの恐ろしさ」で警鐘を発している。

マスコミ・レベル これに対してもう少し掘り下げた情報を得ている人々は、例えば、山中伸弥教授が言及された「ファクターX」に着目し、単なる精神論ではないと考える。とはいえ、日本の素晴らしい科学力を利用して「早くワクチンを開発を」という主張がでてきたときに、これを否定する人はまずいない。

 もちろん、ネットには多くの声が流れている。例えば、3.11直後もまるで準備していたかのように、20分、30分おきに子宮頸がんワクチンの宣伝が流された。国際問題に詳しいジャーナリストの田中宇氏は9.11とコロナの類似点を書く。

 さらにディープなものとして「ワクチン+マイクロチップ+5Gによる電磁波兵器で人工削減、ビル・ゲイツのID2020計画」という情報も流されている。羽賀ヒカル氏やヨーロッパから見た世界の裏事情を熟知するベルリンから発信されているめいこさんの情報もある。ここまでなると編集子としてはとても判断できない。

 科学的エビデンスが乏しいワクチン陰謀説を唱えれば「ワクチン接種を拒否するのか。この非国民め」という攻撃がネトウヨからなされることは目に見えている。

ガーディアン・レベル とはいえ、ガーディアンでは、大規模工業と農業による野生地の破壊がコロナ発生の原因であると多くの科学者の声を引用しながら論じられている。そのうえで、地球に負荷をかけない植物系をベースとしたタンパク質への投資こそが未来を拓くと主張されている。

Leo-fight.jpg コロナをはじめとするパンデミックの本当の原因は過剰な肉食にあり、なればこそ対立構造は「遺伝子組み換えでの飼料作物を生産するアグリビジネス派とアグロエコロジーと小規模家族農業派にあり」というガーディアンの図式は至極納得がいくものだし、目からうろこだった。国連小農宣言の重要性がますます際立ってくるからだ。これならば、かなり社会的コンセンサスが得られるのではないかと思ったりもした。

 奇しくも、編集子が日々愛用し菌が生きている伝統味噌、三原屋に味噌を買い求めにでかけ、在宅していた河原社長と「遺伝子の均一化こそが危ない」という話をしたばかりだ。遺伝子の多様性を守ることこそが、免疫力につながるという論理を展開していけば、それは多様な遺伝子、すなわち、在来種をいかにして守るかということにもつながる。そして、まさに、この論調をベースに大欧州はアグロエロジーと生物多様性を守るための「F2F戦略」を発動させ、これまでの失敗を補完しようとしているのである。 日本においても、是非、こうしたガーディアンレベルでの議論がマスコミでなされることを期待したい。

【用語】
スクリップス研究所(Scripps Research Institute)
センザンコウ(pangolin)の画像はこのサイトより
アグロエコロジーと農村経済研究団(Agroecology and Rural Economics Research Corps)
生鮮市場(wet markets)
シンガポール工科設計大学(Singapore University of Technology and Design=SUTD)
セント・アンドルーズ大学(University of St Andrews)
人畜共通感染症(zoonotic diseases)
●ハンタウイルス肺症候群(Four Corners hantavirus)。1993年、フォー・コーナーと呼ばれる米国南部のユタ、アリゾナ、ニューメキシコ、コロラド州で発熱および急性呼吸窮迫症候群様の症状を呈する疾患がアメリカ原住民の間で流行した。米国疾病予防センター特殊病原体部門の研究者を中心に、その疾患がそれまで存在が確認されていなかったハンタウイルスに起因することが解明された。
●へンドラウイルス(Hendra viruses)。1994年にオーストラリアのブリスベン郊外のヘンドラで、馬と人間の呼吸器及び神経疾患が発生した検体から分離された。自然の貯蔵所は、コウモリとされている。
●メナングウイルス(Menangle viruses )。ブタ、ヒト、コウモリに感染する。1997年にメナング近くの養豚場で2人の労働者が原因不明の深刻なインフルエンザのような病気で倒れ、メナングルウイルス抗体が陽性とされた。
● 世界の農業における思いやり(Compassion in World Farming)。1967年に設立され、動物の生きた輸出、家畜の屠殺、工場型農業に反対するキャンペーンとロビー活動を行っている。
ロンドンインペリアルカレッジ(Imperial College London)
米国国立アレルギー感染症研究所(US National Institute of Allergy and Infectious Diseases)
●高病原性鳥インフルエンザウイルス(highly pathogenic avian influenza viruses)。鳥インフルエンザのなかでも、鶏に感染すると高率で死亡させてしまうもので、そのウイルスとしてはH5N1亜型、H7N9亜型がある。
リブレデブリュッセル大学(Université Libre de Bruxelles)
●国際獣疫事務局(World Organisation for Animal Health= OIE)。1924年に設立された獣疫に関する国際組織。日本は1930年に加盟している。
リバプール大学(Liverpool University)
豚繁殖・呼吸障害症候群(Porcine reproductive and respiratory syndrome=PRRS)
生産保護法(Defense Production Act)
ジョンズホプキンス大学(Johns Hopkins University)
【人名】
クリスチャンGアンダーセン(Kristian G Andersen)教授の画像はこのサイトより
アンソニー・スティーヴン・ファウチ(Anthony Stephen Fauci)所長
リゼー・オーリン・グラム(Lindsey Olin Graham)上院議員
ジェーン・グドール(Jane Goodall)博士
ロブ・ウォレス(Rob Wallace) 博士の画像はこのサイトより
ライル・ファーンリー(Lyle Fearnley)准教授
クリストス・リンテリス(Christos Lynteris)講師
フィリップ・リンバリー(Philip Lymbery)氏の画像はこのサイトより
マイケル・ウォロビー(Michael Worobey)教授の画像はこのサイトより
ウェンディ・バークレー(Wendy Barclay)教授の画像はこのサイトより
デビッド・モレンス(David Morens)博士
マリウス・ギルバート(Marius Gilbert)博士の画像はこのサイトより
マーサ・ネルソン(Martha Nelson)博士の画像はこのサイトより
エリック・フェーブル(Eric Fevre)教授の画像はこのサイトより
ルースハリソン(Ruth Harrison)の画像はこのサイトより
ヤン・ドットキェーヴィッツ(Jan Dutkiewicz)博士の画像はこのサイトより
工業型畜産の画像はこのサイトより
ミートリックスの画像はこのサイトより
【引用文献】
(1) John Vidal, 'Ban on bushmeat' after Covid-19 but what if alternative is factory farming? 27 May 2020.
(2) Laura Spinney, Is factory farming to blame for coronavirus?, The Guardian, 28 Mar 2020.
(3) Jan Dutkiewicz, Astra Taylor and Troy Vettese, The Covid-19 pandemic shows we must transform the global food system,The Guardian, 16 Apr 2020.
(4) Liz Specht Let's Rebuild the Broken Meat Industry−Without Animals, WIRED, 20May 2020.
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2020年06月03日

コロナ以降の世界〜免疫力と食料安全保障

コロナウィルスでオーガニック製品ブーム

 コロナウイルスのパンデミックによって、有機農産物への需要が急増し、世界中の小売業者がオーガニック製品の大幅な売上増を経験している(1,3)

 最も高い売上の成長が報告されているのはオンラインでの販売だ。世界最大の有機食品販売業者、ホールフーズマーケットは、未曽有の需要増から、オンラインでの食料品の顧客数を制限し始めている。イギリスでは、Abel&Coleは受注が25%も増えた。デボン州で農場とベジタルブルボックスの配送を行うリバーフォードでも需要が急増している。インドのオンライン販売業者であるNourish Organicの先月の売り上げは30%も増えた(1,3)

 オンライン以外での店頭販売でも、政府が導入した緊急措置の恩恵を受けている。多くの国ではオーガニックや健康食品店は開かれたままで、新たな顧客を引き付ける一方、既存の顧客はさらに多くを支出する。フランスでは、いくつかのオーガニックフードショップでは40%以上の売り上げ増が報告されている(1,3)

Finn-Cottle.jpg イギリス土壌協会の販売コンサルタント、フィン・コッテル女史は、ロックダウン中でもオーガニックの販売は好調だと語る%以上の成長を遂げてきたが、3月と4月はさらに25.6%の売り上げ増があった。「他の商品よりもよく、有機ワイン、有機牛肉、バターとともに、オーガニックコーヒーや紅茶の購入が大幅に増えました。全体の小売りよりも成長率が高いのです」とコトル女史は言う(3)

免疫力アップを期待してオーガニックに走る消費者たち

Amarjit-Sahota.jpg「オーガニック・モニター」の別名で知られる「エコビア・インテリジェンス」は、グローバルなエシカル商品を重視し、その流通やコンサルティングを行っているのだが(2)、同社の創設者兼社長、アマルジット・サホタ氏は、コロナウィルスによって、健康と栄養との関連性についての消費者意識が高まり、免疫力を高めたい消費者が有機や健康食品を購入しているという(1,2,3)

 AIを用いることでオンラインでの消費者の関心を分析する「Tastewise」のデータによれば、食品検索で「免疫力」というキーワードが2020年3月では27%も増え、紅茶キノコ、ピクルス漬け野菜、ゴーヤが特に関心が高まっている(3)

 アマルジット・サホタ社長は言う。

「コロナの危機で消費者は免疫力を高めようとして、有機食品や野菜や果物等の植物系食品、そして、栄養サプリメントに多くを支出しています。健康となり予防のために購入するとなれば、価格はさほど重要にはなりません。有機の方が慣行食材よりも安全で健康だと思われていることで売上を後押ししているのです。様々な研究から慣行よりも有機の方が栄養素が多いことが示されています。加工の食品よりも栄養価が高いとして消費者は有機を買っているのです」(3)

サプライチェーンの脆弱性と地場産への関心の高まり

 サホタ社長は、最近はグローバル化に向かう傾向があったが、パンデミックはこうしたサプライチェーンの脆弱性を際立たせたと述べる。そして、現在のパンデミックの勝者は、調達のリスクが小さい、短いサプライチェーンの企業だったと言う。

「飲食品企業が複雑なサプライチェーンの軽減を目指しているため、透明性とトレーサビリティも向上することも期待しています」と 社長は説明する(2)

 土壌協会のコトル女史も食料安全保障への懸念から、この不確実な時期には、消費者は地元起業を支援しようとして、地元製品への売り上げが高まっていると指摘する(3)

コロナ以降もオーガニックブームが続くとの見通し

 なお、エコビア・インテリジェンスはコロナがおさまり、消費者の不安が鎮静した以降もオーガニックへの需要が強いままとどまると楽観的に予測する(1,3)

「SARS等の不安があるときは消費者は、予防や栄養に目を向けます」とサホタ社長は言い(3)、以前も食料は健康への不安がオーガニック食品の売り上げの急増をまず引き起こし、その後も需要が続いたと指摘する(1,2)

 例えば、2000年のBSE危機では、欧州全域でオーガニック肉製品への需要が高まり、その後の売上も引き続き好調だった(1,2,3)。「オーガニック肉への需要はBSEの危機以降も持続しました」とサホタ社長は言う。この20年前の欧州のBSEによるオーガニック肉への需要増が生産増へのかなりの投資につながり、数年後には欧州は世界最大のオーガニック肉の製品市場になった(3)

 同様に、2004年のSARSの発生が中国とアジアでオーガニック食品需要の急増をもたらした(1,2,3)。また、2008年の中国の牛乳スキャンダルで、オーガニックベビーフード需要が高まり(1,3)、数年も経ずして中国は世界最大の有機粉ミルク市場となった(1)

 1990年代以降、有機食品は増えているが、世界のオーガニック製品の売上高が2008年の500億ドル(5兆4000億円)に達するには15年以上かかった。その10年後の2018年には、1,000億ドル(10兆8500億円)を超えた。コロナウィルスが購入品の内容や食事の方法を変えたことで、次の5年間では1500億ドルへの飛躍が見込まれよう(1)

需要増による供給不足が懸念

 とはいえ、需要の急増は供給に問題をもたらす。現在、有機食品産業はグローバル化しており、国際的な供給ネットワークに圧力がかかっている(1)。エコビア・インテリジェンスによれば、欧州や北米の有機食品会社が使用する原材料の多くは、アジア、ラテンアメリカ、アフリカで生産されているのだが、ロックダウンはサプライチェーンを混乱させている。例えば、インドはオーガニックティー、ハーブ、スパイスの関連食材の主要供給源だが、3月に導入された緊急措置によって輸出を停止した(1,3)

 サホタ社長は、オーガニック製品を増やすにもタイムラグがあることを指摘する。

「課題は需要が増えても有機に転換するには通常18カ月はかかりますから、需要があるからといって供給量を増やすことは容易ではありません」(3)

英国は食料安全保障からグローバル競争力よりも自給にシフトか?

 そして、サホタ社長は、パンデミックが世界的なサプライチェーンの脆弱性を浮き彫りにしたことから、イギリスは国内の食料生産を重視して政策を変える可能性があるとみる。

「政治レベルにおける重要な教訓のひとつは、食料安全保障です。まさに第二次世界大戦のように、現在の緊急状態は、国内の食料生産とサプライチェーンの必要性を強調しています。私どもは、イギリスには強力な食と農業セクターを有していることから、こうした危機時の食料の安定的な供給を担保するため、今後数年の政策変化を見ることを期待しています。」

 事実、イギリス政府はすでに、国内の酪農業を支援するために競争ルールを緩和することを発表した。そして、社長は、食品メーカーもパンデミックの影響を受けて、サプライチェーンを再検討するのではないかと予測する。北アイルランドの大手食品メーカー「マッシュダイレクト」もコロナウイルスの影響に対抗するために、取り組み始めた(2)

編集後記

 本稿に書いたように、インドのオンライン小売業は先月の売り上げが30%も増えたとあるが、本日、日経新聞も「インド、有機野菜を推進 都市封鎖、健康意識高まる」としてそのことを報じた。

 もちろん、前半はいい。世界のオーガニック需要が高まろうが、有機野菜ブームが起きようが、そんなことは我が国にはさして関係がない。あえてあるとすれば、諸外国が三下り半を下す「カス」しか輸入できなくなることだ。とはいえ、後半の食料安全保障の方が気になる。もし、海外が自給を重視し「売らない」となればどうなるのであろうか。とりわけ、イギリスが国内酪農業を支援するため競争のあり方をみなおしたとの情報は気になる。日本国中央政府、天下の経済産業省が推進してきたTPP戦略にまさに不安の影を投げかける情報ではないか。

 とはいえ、日本国中央政府の政策はびくともしないであろう。ということで、こうした情報をこのブログが書いたところで、マスターベーションでしかないのだが、個人的には、世界のトレンドは注視し続けなければならないと思っている。

【人名】
アマルジット・サホタ(Amarjit Sahota)氏の画像はこのサイトより
フィン・コッテル(Finn Cottle)さんの画像はこのサイトより

【用語】
ホールフーズマーケット(Whole Foods Market)
リバーフォード(Riverford)
土壌協会(Soil Association Certification)
エコビア・インテリジェンス(Ecobia Intelligence)
ゴーヤ(Bitter Melon)
●牛乳スキャンダル(The melamine scandal。2008年、中国では、ミルクと乳児用の調製粉乳にメラミンが混入した。推定30万人が犠牲を受け、6人の乳児が腎臓結石他の腎障害で死亡し、推定54,000人の乳児が入院した。

【引用文献】
(1) Ecovia, Organic Foods Getting Coronavirus Boost, ECOVIANT, 16April 2020.
(2) Michelle Perrett, Food manufacuture, Coronavirus: UK to prioritise domestic supply as coronavirus hits imports, 21April 2020.
(3) Katy Askew, Organic food's coronavirus boost: 'Health crises have a long-term impact on consumer demand',06May 2020.
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