2014年12月30日

アグロエコロジーのルーツは伝統的な百姓農業

●はじめに

 アグロエコロジーが着目されている。2014年9月には、FAOがアグロエコロジーに関する国際シンポジウムを開催。日本からは、佐藤農林水産大臣政務官が、演説すら行っている。けれども、日本語のサイトでアグロエコロジーを検索しても、ワーゲニンゲン大学で有機農業修士を取得した「みけ」さんのブログ「アグロエコロジー新聞」か、株式会社オルター・トレード・ジャパンのサイトあるいは、オルター・トレード・ジャパン政策室室長の印鑰智哉氏のブログくらいしかない。

 そこで、本サイトでは、アグロエコロジーとは何なのか、ネットで手に入る情報をもとに、私見を紹介したい。まず、抑えておかなければならないのは、アグロエコロジーと伝統農業のつながりだ。アグロエコロジーの第一人者、カリフォルニア大学バークレー校のミゲル・アルティエリ教授によれば、そのテクノロジーは、新石器時代にまでさかのぼる。近代農業一派からは、アグロエコロジーは生産性が低いため遺伝子組換え技術との併用が必要だとの主張がなされているが、これは詭弁というものだろう。アグロエコロジー農法は、面積当たりの総産出量でもエネルギー効率からみても、近代農業よりも効率的なのだ。しかも、気候変動に対するレジリアンスが高い。アグロエコロジーはたかだか数十年の歴史からない近代農業と比べ、数多の環境変動を乗り越え、数千年も人類を養ってきた折り紙つきのテクノロジーなのだ。

●伝統農業にはアグロエコロジーのヒントが眠っている

 いまだに、地球上には、約3億5000万の小規模な農場で、15億人もの百姓や家族農家、先住民たちがいる(ETC 2009)。その実数を把握することは極めて困難だ。けれども、こうした百姓たちの約50%が資源保全型の伝統的な農業を用いているとされる。伝統的な農業生態系は、世界各地の様々な条件下で発展してきたが、次のように驚くほどの共通点が見られる。

(1) 生態系の機能を調節する鍵となる役割を果たし、豊かな生物多様性が貴重なサービスをもたらす

(2) 絶妙なシステムやテクノロジーを用いて農業生態系を改善し、景観、土壌、水資源を管理・保全

(3) 多様な農業システムが地元や全国的な食料や生活のセキュリティに寄与

(4) 人為的、環境的な撹乱や変化へのリスクを最小化・対処するレジリアンスや頑丈さを示す

(5) 伝統的な知識体系と農民たちのイノベーションやテクノロジーを通じて農業生態系を育む

(6) 儀式を含めた強力な文化的な価値観や社会集団の慣習で地域資源を規制しわかちあう

 (Dewalt 1994, Koohafkan and Altieri 2010)。

 その複雑な知識体系を通じて、土壌や水を保存し、莫大な数の動植物種の多様性を維持することで、持続可能な農業システムを築くことに成功してきた伝統農業の事例は数限りない(Toledo and Barrera-Bassols 2008)。実際、そうした伝統農業が何世紀も世界の多くの人々を養ってきたし、いま現在も地球の大半、とりわけ、開発途上国の多く人々を養い続けている。

 伝統農業には、現在問題となっている天然資源の保存という難題に対する多くの解決策が保持されている(Koohafkan and Altieri 2010)。人類は現在、グローバルな気候変動や金融危機、ピークオイルと数多くの不確実性に直面しているが、伝統的な農業生態系には、その解決策をもたらす可能性がある(Denevan 1995, Altieri 2004)(1)

●安定性とレジリアンスを高めた伝統農業

 アグロエコロジーは、この伝統的な小規模農業のエコロジカルな論理に深く根ざす(Toledo 1990, Altieri 2004)。アグロエコロジーのアイデアの鍵は、最小限度のエネルギーや農薬にしか依存せず、「農業生態系」を発展させることにある。アグロエコロジーは、科学と実践のセットである。科学としてのアグロエコロジーは、持続可能な農業生態系の研究、デザイン、マネジメントのために生態学を適用することだ(Altieri 2002)。このことは、地力を保全することで生産性を維持し、農業生態系の要素間の有益な生物的なインタラクションや相乗効果を促進し、作物を保護するため、農場を多様化することにほかならない(Altieri 2002)。外部から投入資材を導入せずに農場内で養分やエネルギーを循環させる。土壌中の有機物や土壌内の生物的活動を強化する。時空間での農業生態系の植物種や遺伝資源を多様化する。ある作物種の収量だけを高めるのではなく、有畜複合を通じて、農場システム全体のインタラクションや生産性を最適化する。これらが、アグロエコロジーの中心となる原則である(Gliessman 1998)。複作、輪作、アグロフォレストリー、在来種や地元で育種された家畜の使用、害虫の天敵の活用、堆肥や緑肥を用いて土壌有機物を増やし、保水力や土壌内の生物活動の強化を通じて、農業システムを多様化することによって、農場の持続可能性とレジリアンスが達成される(1)

 これは、伝統的な百姓たちがやってきたことだ。伝統的な百姓たちは、天然資源の使用にあたっても複数の戦略を採用する。それが、豊かな生物多様性からなるモザイク的な景色を創り出している(Toledo 1990)。圃場レベルでそれを見てみよう。百姓たちの農業システムの顕著な特徴は、複作(polycultures)やアグロフォレストリーによる豊かな植物多様性だ。そうした多用な農場には、養分補充植物(nutrient-enriching plants)、天敵、花粉媒介者、空中窒素固定植物、窒素分解バクテリア、有益なエコロジー的な機能を果たす各種の生物が含まれる。

 伝統的な農業生態系には、在来種だけでなく、作物や雑草の親族(relatives)も含まれる。こうした遺伝的な多様性が、病害虫、旱魃他のストレスに対応し、土壌や変化や標高差、斜面、灌漑水の有無といった多様な農業生態系を幅広く利用することが可能となっている。そして、リスクを最小化するため、多くの作物や多くの品種を作付ける戦略は、長期的に収量を安定させ、多様な微気候を利用しながら、多様な遺伝種から豊かな食を可能とし、それ以外の用途も引き出せている。

 景観スケールでは、百姓たちは、家畜、休閑圃場、アグロフォレストリーと多様な生産システムを統合し、作付体系のモザイクを形成し、一次林と二次林とが混在する多様なモザイクの作付体系と農地景観を作り出してきた(Perfecto et al. 2009)。そうして、こうした多様性がシステムに安定性とレジリアンスをもたらす。

 数多くの伝統システムは、生物多様性や遺伝的な多様性を促進することで、低レベルのテクノロジーと限られた資源でさえ見返りを最大化してきた。たとえ、化学資材がなくても繁栄し、収量を維持してきたことを何よりも、長い時間のテストが示している(1)

●伝統農業と百姓農業の宝庫、ラテンアメリカ

 ラテンアメリカには、約725の言語を話す4000〜5500万人もの先住民を含めて、百姓や小規模農民が約6500万人いると評価されている(Toledo et al. 2010)。10年前のデータでは、百姓たちの農業は平均規模が1.8haと小さいが、領域で消費されるトウモロコシの51%、マメの77%、ジャガイモの61%を生産している(Ortega 1986, Altieri 1999)。

 ブラジルだけで、農業生産者の総数の約85%を占める。約480万人の農民たちがいる。ブラジルは農地の所有格差が大きく、わずか1.6%の地主が土地の47%を所有し、農村人口のわずか3%が農地の66%を所有している。けれども、農地の30%を占める百姓たちが、トウモロコシの作付け面積の約33%、マメの61%、キャッサバの64%を管理し、キャッサバの88%、マメの67%を生産している。エクアドルでも、トウモロコシ、マメ、大麦、オクラ等食用作物の生産地の50%以上を百姓たち耕している。そして、メキシコでも、トウモロコシの栽培面積の70%、マメの60%は百姓たちが担っている(1)

 そこで、30年以上も、ラテンアメリカのアグロエコロジストたちは、近代農業システムは、先住民の伝統農業のエコロジー的な論理的根拠に根付く必要があり、伝統農業をモデルとすることで、生物的に多様で、持続可能で、レジリアンスがあり、効率的な農業への道を約束できると主張してきた(1)

●ネオ緑の革命派のアグロエコロジーとGMOのハイブリッド論

 いま、食品、燃料、気候危機の高まりで、アグロエコロジーの百姓農業がもたらすエコロジー的、社会的なサービスの重要性が広く認められるようになってきている(2)

 1970年代に、緑の革命によって、小規模農場が破綻し始めると、数多くの農民たちは、土壌有機物を回復し、水を節約し、農業生物多様性を回復し、害虫を防除するため、アグロエコロジーへと転換していく。1980年代の初期以来、ラテンアメリカだけでなく、アフリカ、アジアで何百ものNGOが、伝統知識と近代的な農学を組込んだ何千ものアグロエコロジーのプロジェクトを推進してきた(2)

 とはいえ、緑の革命も従来のままではなく、それ自身を「グリーン化」しつつある。そして、アグロエコロジーの低生産性を批判する。ここから導きだせる結論は、アグロエコロジーと緑の革命との組み合わせである。例えば、有機農家(Roland and Adamchak 2009)やエコロジスト(Foley 2011)の中には、アグロエコロジー、有機農業、バイオテクノロジーを組合せることで、投入資材の効率性を高め、気候的にスマートな遺伝品種を活用し、産業型農業の環境に対する負荷を軽減しつつ、持続可能な集約化を通じて、アグロエコロジーの低生産性という弱点を克服できると主張する。

 ビル・ゲイツ財団(2008)は、これに統合的な地力マネジメントを加える。すなわち、深刻な食料危機を克服するためには、あらゆる解決策を動員する必要があり、生産的なGMOと非生産的ではあってもグリーンなアグロエコロジーの双方が必要であると提案する。すなわち、アグリビジネスは、小規模農業やアグロエコロジーを産業型農業にとっての障害ではなく、むしろ新たな緑の革命を広めるための手段として利用しようとしている。けれども、この批判は、アグロエコロジーを用いた百姓農業の高い生産性やレジリアンスを実証するエビデンスを無視している(2)

●アグロエコロジーはモノカルチャーよりも生産性が高い

 農場の規模と生産性との関係性に関しては、数多くの議論がなされているが(Dyer 1991, Dorward 1999)、一作物の収量ではなく、トータルの産出量から見れば、小規模な家族農場の方が大規模農場よりも生産的だ、というのがアグロエコロジーの見解である。アグロエコロジーの統合された農業システムでは、小規模な農民たちは、穀類、果実、野菜、飼料作物、畜産物と様々な農畜産物を生産する。トウモロコシだけの収量を見れば、大規模農場でのモノカルチャーにはかなわない。けれども、大規模農場がトウモロコシしか生産しないのに対して、小規模農場では、マメやカボチャ、ジャガイモ、飼料作物も含めた複作(polyculture)の一部としてトウモロコシが栽培される。面積あたりトータルの収量はモノカルチャーよりも高く、そのメリットは20〜60%にまで及ぶ。複作では、雑草や害虫による損失が減り、水や光や養分といった資源をより効率的に使えるからだ(Beets 1982)。

 メキシコの研究からは、トウモロコシ、カボチャ、マメを混作した1haと同量の食料をモノカルチャーで生産するには、トウモロコシを1.73ha作付けなければならないことが見出されている。しかも、トウモロコシのモノカルチャーでは土壌に剥きこめる乾燥物が2t/haしか産出されないのに、トウモロコシとカボチャとマメの混作では最高4t/ha生み出せる。

 ブラジルでは、12,500本/haのトウモロコシよりも、150,000本/haのマメ植物を含む混作の方が28%も収量が高いことが見出されている(Francis 1986)。アマゾンでは、カヤポ(Kayapo)族の収量の方が、農業化学技術を用いる入植者のシステムよりも約200%高い(Hecht 1989)(1)

 トウモロコシとマメを組み合わせた『ミルパ(milpa)』農法が、多くのグアテマラの農村の食料セキュリティの基礎となっている。Isakson (2009)の研究によれば、ほとんどの百姓たちは、換金作物の栽培やそれ以外の経済活動をすれば、収入を増やせる可能性を十分に意識している。けれども調査を行った99%の世帯は家族の食料セキュリティに重要だとミルパの実践を維持していた。ミルパは、それが産み出すカロリー以上に百姓たちの食料セキュリティに寄与する。家族の基本的な暮らしのニーズが満たされることも担保している(1)

●エネルギー投資効率からみるとアグロエコロジーが効率的

 化学投入資材をわずかしか利用していなくても、ほとんどの百姓システムのほうが生産的で、あることがわかる。概して、投入農業労働力当たり高い見返りがあることがわかる。例えば、典型的な高地マヤ族のトウモロコシ農場で費やされる労働に対するエネルギーの見返りを見てみよう。

 1haの農地で230,692カロリーを産出するのには約395時間がかかる。すなわち、1時間の労働当たり約10,700カロリーが生み出されている。3人の成人と7人の子どもからなる家族が年間に消費するのは約4,830,000カロリーのトウモロコシである。すなわち、このシステムは典型的な5〜7人の家族を養うのに適切である。

 さらに、こうしたシステムは、エネルギー効率からみても望ましい。メキシコの丘陵地の、手作業による焼き畑システムのトウモロコシの収量は約1940kg/haで、11:1のアウトプット/インプットである。グアテマラの同様のシステムもトウモロコシの収量は約1066kg/haで、4.84:1のエネルギー効率である。家畜を用いると、収量は必ずしも増えず、エネルギー効率は3.11〜4.34:1と落ちる。さらに、化学肥料他の化学資材が導入されれば、収量は5〜7t/haと高まるが、エネルギー面では2.5以下と非常に非能率である。おまけに、ほとんどの百姓たちは貧しく、一般に補助金がなければ、化学農業資材を手にできない(Pimentel and Pimentel 1979)(1)

●百姓農業は気候変動へのレジリアンスが高い

 気候変動を研究する世界の科学者たちのほとんどすべては、ハリケーンや旱魃といった未来により過激な天候の出来事を予測している(3)。そして、気候変動と百姓農業とが最も関連するのは、おそらく、多くの小規模な百姓たちが旱魃耐性のあるローカル品種、水の収穫(water harvesting)、混作、アグロフォレストリー、土壌保全他の一連の伝統的な技の利用を通じて、不作を最小化することで気候変動に対処し、準備さえ実現していることであろう(1)

 ここ20年の極端な気候事象後の農業パフォーマンスを観察することで、気候災害に対するレジリアンスが、農場の生物多様性のレベルと密接につながっていることが明らかになってきた(1)。レジリアンスとは、土壌浸食、塩類集積、ハリケーン、旱魃、洪水、あるいは、石油価格や化学的投入資材の突然の値上がり、外的投入資材の供給遮断等の外的な撹乱ストレスを受けても、生産力を維持する農業生態系の能力のことだ(3)

 例えば、1998年のハリケーン・ミッチ(Hurricane Mitch)の襲来後に、「Campesino a Campesino運動」が先鋒となり、1,804地区の持続可能な農業と慣行農場におけるアグロエコロジーの具体的な指標を観察するため、100人の農民テクニシャン・チームが動員され、ニカラグア、ホンジュラス、グアテマラの丘陵地の360のコミュニティと24の部(department)で測定された。その結果、カバークロップ、間作、アグロフォレストリーといった多様な実践を用いている農民は、近隣の慣行モノカルチャーに比べわずかのダメージしか受けていないことが示された。アグロエコロジーの実践される農地では、20〜40%表土や土壌水分が多く、土壌侵食が少なく、慣行の隣区よりも経済な損失も少なかったのである(1)

 同じくメキシコのチアパス(Chiapas)のソトヌスコ(Sotonusco)では、植生が複雑で植物の多様性が高いコーヒー園が、より単純なコーヒー園よりも、ハリケーン・スタン(Hurricane Stan)のダメージが少ないことが示された(1)

●ハリケーンの被害も少なく、いち早く復興

 キューバは、地理的にハリケーンの直接的な通り道にあることから、気候変動に対するレジリアンスは、キューバにとって重要である。

 2008年、ハリケーン・イケ(Hurricane Ike)がキューバに襲来した40日後に、アグロエコロジーのハリケーンに対する脆弱性とレジリアンスを確認するため、研究者たちのチームは、オルギン州とラス・トゥーナス州の農場調査を実施した。産業型のモノカルチャー農場は90〜100%と完全に破壊され、回復状況もかんばしくはなかった。ところが、アグロエコロジー農場は、被害が50%と小さく、ハリケーンの40日後でも既に80〜90%といち早く回復を始めていたのである(1,3)
 多くの農家にインタビューを行い、研究者チームは、アグロエコロジー農場のレジリアンスが高い理由を見出していく。

1.物質・生物的レジリアンス アグロエコロジーシステムは、等高線作付(contour planting)、ガリ浸食の管理、グラウンド・カバー等の土壌保全対策を講じていたため、土壌浸食や地すべり被害が少ない。また、モノカルチャー農場は、バナナだけしか作付けられず、ハリケーンですべてなぎ倒されていたが、アグロエコロジー農場は、バナナの下にキャッサバ、トウモロコシ、豆、カボチャ、トマトも栽培されるアグロフォレストリーシステムの複層植生(multiple layers)となっていた。このため、ハリケーンはバナナの最上層を吹き飛ばしただけで、下側の植生層では直接的な被害が少なかった。これが、アグロエコロジー農場の被害が50%ほどですんだ理由だ。
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 図を見ていただきたい。これは、キューバのANAPがアグロエコロジーへの転換度合いを調べるため、2008年に設定した指標に応じて分類した各カテゴリー毎のCCS農場の被害状況をインタビューによって確認したものである。カテゴリー1は、アグロエコロジーへの転換に着手した農場で、カテゴリー2はアグロエコロジーへの転換がかなり進み、カテゴリー3はほぼ完全にアグロエコロジーへの転換が成し遂げられた農場である。最もハリケーンの被害を受けた農場でさえ、モノカルチャー農場のように全滅することはまぬがれ、さらに、カテゴリー3の農場では、被害は30〜60%に及んだが、調査を行ったCCSの全農場の平均75%以下であることがわかる。

2.生物的な回復 アグロエコロジー農場では、植生が多様であるため、突風の影響が緩衝され、ほとんどが枯死したモノカルチャー農場と比べて、個々の作物へのダメージが少なかった。そのため、40日後には、被害を受けても枯死しなかった多くの植物は、葉や枝を出す等、生物的に回復を始める。さらに、最上層のバナナの葉が吹き飛ばされたことで、下側の植生層の日当たりが良くなり、わずか40日後でもよく成長して生産が増えたことが、上層部の被害をオフセットしたのである。

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 図をみていただきたい。ハリケーンの被害後にはアグロエコロジーへの転換度が大きい農場ほど回復も早いことがわかるだろう。さらに、インタビューを受けた百姓たちは、研究者に対して、ハリケーンだけでなく、旱魃に対する抵抗力も高いと語った。アグロエコロジーでは、土壌有機物の含有量が多く、カバークロップがあることから、表土が暑くならず、湿気も保たれる。さらに、外的な投入資材にさほど依存していないことから、経済封鎖に対してもレジリアンスがあるのだ。

3.カンペシーノのレジリアンスと回復力 写真をご覧いただきたい。これは、ハリケーン襲来後40日後のラス・トゥナス州の農場の状況である。完全に破壊されたココナッツが既に新しいものに植え替えられていることがわかる。小規模なアグロエコロジー農場では、百姓たちは農場内、あるいは、農場のすぐ近くに住んでいる。そのため、災害以降もハリケーンになぎ倒された樹木を再び立て、棒や石で支える等、復興に向けて熱心に働いていた。こうした樹木は生き残るであろう。これに比べて大規模なモノカルチャー農場では被害後には災害復興に向けた努力がほとんど認められなかった(3)
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 この三つの研究から、気候災害への脆弱性を減らすには、農場の多様性や複雑さを強化することが重要であることがわかる。ラテンアメリカにいまだに存在する数多くの伝統農業が、世界的にも貴重な農業遺産となっていることは間違いない。多くの百姓たちが、複作(polycultures)やアグロフォレストリーを実践してきた事実は、多様な環境に適応して、世代から世代へと、変化する環境に適応してきた人類の能力の魅力的な物語でもある。伝統的な農業生態系のアグロエコロジーの機能を理解することは、気候変動にレジリアンスのある農業システムをデザインする基礎として役立つ。しかも、こうしたシステムのかなりは新石器時代の遺産から構成されている。こうしたシステムの資源利用上でのエコロジー的、文化的な意義、蓄積された知と経験の富、レジリアンスや適応力の情報源の鍵として、先住民のテクノロジーを再評価する必要性があるのだが、農業近代化はこの遺産を脅かし、古代農業システムを保護・保存するためには努力はごくわずかしかなされていないのである(1)

【引用文献】



posted by fidel at 10:30| Comment(0) | 伝統農業 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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